太平洋セメントは米国企業からカリフォルニア州の生コン事業を買収する(写真は同社の米オログランデ工場)

太平洋セメントは28日、米国で骨材・生コンクリート事業などを手がけるVulcan(バルカン)社の生コン工場などを買収すると発表した。買収額は7億1200万ドル(約1000億円)で同社としては過去最大規模の投資となる。日本国内のセメント需要が低迷するなか、米国でデータセンターや電力インフラ、住宅など向けに事業を伸ばす。

バルカン社は米アラバマ州に本社を置く骨材・生コン事業の大手だ。カリフォルニア州には生コン工場41カ所とセメントターミナル2カ所を構えており、これらを太平洋セメントが米国子会社を通じて取得する。買収対象事業の2024年度の売上高は約5億2000万ドルだった。25年12月中の買収完了を目指す。

太平洋セメントはカリフォルニア州に3つのセメント工場を持ち、同州南部を中心に生コン事業や生コンに混ぜる骨材事業も拡大してきた。24年12月には同州ベンチュラ郡の骨材採石場と生コン工場を買収した。今回の買収でこれまで空白地帯だったサンフランシスコなどがある同州北部にも進出し、生コン事業を拡大する。

買収で太平洋セメントが持つ米国内の生コン工場は計110カ所となる。建設現場などで使う生コンは固まる前に届ける必要があるため、輸送距離を短縮しながら安定供給することが競争力に直結する。セメント事業に比べて利益率も高く、セメントの拡販だけでなく生コンや骨材を合わせて手掛けることで米国事業の収益性を高める。

米国市場ではトランプ政権下でのインフラ投資拡大が追い風となる。新たに進出するカリフォルニア州北部では、人工知能(AI)関連のデータセンターや電力インフラの投資が見込まれる。さらに老朽化した港湾施設や橋などの更新、28年に開催されるロサンゼルス五輪に向けた需要増もにらむ。

米国は住宅需要も旺盛だ。人口増に住宅建設が追い付いておらず約400万戸が不足しているという。解消まで7年との試算もある。足元は金利の高止まりから鈍化しているが、今後も住宅需要は高水準で推移する見通しだ。

日本国内では24年度のセメント販売が3263万トンと6年連続で前年を割りこみ市場は縮小傾向だ。人手不足や建築資材の高止まりによる工期の遅れなどが響く。国内市場が厳しいなかで米国事業を拡大し収益性を高める。

トランプ米大統領の来日にあたり日本企業の対米投資の表明が相次いでいるが、太平洋セメントは「今回のトランプ氏の来日とは関連はない」とコメントした。

(佐藤杏奈)

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