会計検査院=東京都千代田区で、柴沼均撮影

 新型コロナウイルス禍で影響を受けた中小企業の業態転換などを支援する国の補助金事業を巡り、事業者が虚偽の申請をするなどして補助金を過大に交付されていたことが会計検査院の調査で判明した。検査院は5日公表の2024年度決算検査報告で、計3億4461万円分の補助金交付を「不当」と指摘した。

 指摘の対象は、中小企業庁から交付される国庫補助金が原資の「中小企業等事業再構築促進補助金」。事業者は国が定める要件を基に事業計画書などを作成して申請し、独立行政法人の中小企業基盤整備機構が事務局による審査を通じて補助金を交付する仕組みだ。21年度に導入され、24年度末までの間、6万223事業者に総額1兆3740億1549万円が交付された。

 検査院は今回、補助金額の大きさなどを考慮して抽出した226事業者を調査した。その結果、実態を伴わない虚偽の実績報告書などに基づき補助金を過大に受給▽補助対象とならない経費を含めて補助金を申請▽補助金で取得したため処分が制限される財産を無断で処分――などのケースが判明。「不当」な補助金交付は20事業者、計3億4461万円に上った。

 20事業者のうち、さいたま市の空調設備会社「才木工業」は約2485万円を不正に受給していた。

 24年春に再構築事業として、キャンプ場の新設工事を約4164万円で外注したとする実績報告書を基に補助金を受給。だが、実際は外注せずに同社社員が工事などをし、外注先との契約書などは虚偽の資料だった。さらに申請前の23年夏から取引があったように装うため、外注先に4164万円を支払った上で架空の工事費名目による1240万6240円のキックバックを受け取ったという。

 取材に対し、同社から事務を委託されているという男性は「『弁護士を入れるかどうかを検討しているため、今は取材に応じられない』と答えるよう言われている」と話した。

 事業再構築促進補助金を巡っては、20事業者の一部を含む108事業者が補助金交付額計24億7315万円分の事業で、事業化の状況を適切に報告していなかったことなども判明。検査院が中企庁などに改善を求めた。こうした調査結果から、今回指摘された事業者以外の補助金についても見直しが迫られそうだ。【山田豊】

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