「溶液法」で製造したウエハー(山梨県北杜市の工場)

光学系部品のオキサイドは炭化ケイ素(SiC)製パワー半導体ウエハー(基板)を、結晶欠陥の少ない新製法で試作することに成功したと発表した。欠陥が少ないほど半導体に加工した際の歩留まり(良品率)が上がるため、量産が進めばチップ1個当たりの生産コストを従来より抑えられる。まずはデータセンターや電力インフラの需要を開拓する。

直径6インチ(150ミリメートル)品を試作した。新技術の「溶液法」はケイ素と炭素を含む溶液からSiC基板を製造する。気体からSiC結晶を成長させる主流の「昇華法」と比べて基板の欠陥を少なくできる。品質を安定させて結晶を成長させるのが難しく、基板の大口径化が課題だった。

パワー半導体は電圧の制御に使い、SiC製は従来のシリコンよりも大電力に耐えられる。

オキサイドは名古屋大学や研磨剤製造大手のマイポックスの協力を得て温度や濃度の最適な条件を追求した。製造設備は経済産業省の支援で導入した。さらに昇華法では製造が困難とされ6500ボルトの超高電圧にも耐えられる「p型」基板の試作にも、溶液法を用いることで成功した。半導体製造会社に基板を売り込み、量産化につなげたい考えだ。

SiCはもともと日本勢が研究開発で先行していた。近年は中国が量産技術で追い上げ、既に基板供給では3割超のシェアがある。中国企業も溶液法による基板製造にこぎつけているが、本格的な量産には至っていない。安価な基板を国内で量産できるようになれば、半導体企業の競争力強化につながり脱炭素を支えるサプライチェーン(供給網)も強固にできる。

BUSINESS DAILY by NIKKEI

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