ガソリン税に上乗せされている暫定税率(1リットル当たり25・1円)を12月末で廃止することで与野党6党が正式合意し、ガソリンスタンド(GS)で販売されるガソリン価格が大きく下がる見通しとなった。消費者からは歓迎の声が上がる一方、GS側は目立った消費拡大につながるとはみていない。価格の問題以前に、車の燃費性能向上で、需要そのものが減り続けているからだ。
暫定税率が導入されたのは1974年。道路整備費用の不足を補うための一時的な仮の取り決め(暫定)として始まり、半世紀以上続いている。今回の廃止は、ガソリン分は12月末、軽油分(1リットル当たり17・1円)は来年4月1日に実施される。
21年以降、急騰した価格
資源エネルギー庁が毎週発表する「石油製品価格調査」によると、4日時点のレギュラーガソリンの全国平均は173・6円で、奈良県内平均は170円。2020年までは全国平均1リットル130~140円台で推移したが、21年に150円台に乗り、22年に170~180円へ急騰した。
理由は円安傾向が約5年前から強まっていることにある。国はこれまで何度も激変緩和対策として補助金を石油元売りに支給。今年5月からも1リットル当たり10円を支給し、販売店への卸値が下がることで末端価格は何とか170円台を保っているが、高水準であることは間違いない。この中で暫定税率による25・1円の上乗せ分が廃止される効果は大きい。
価格は今後、暫定税率が廃止される年末よりも前に大きく下がる見通しだ。税率廃止に伴い、元売りに支給される補助金が年末までに段階的に引き上げられるためだ。13日に15円、27日に20円、12月11日には25・1円となるため、全国平均価格は155~160円が中心になる見通し。そのまま年明けに暫定税率廃止を迎え、同時に補助金もなくなることで、価格の急激な変動が避けられ、消費者の負担軽減も見込まれる。
だが、価格が下がってもGSのガソリン販売量が大きく増えることはなさそうだ。ガソリン価格高騰が長期化する中で、省エネ意識が定着した上、そもそもガソリンを使わない電気自動車(EV)や、燃費性能が高いハイブリッド車(HV)などが台頭しているためだ。
「そこまで大きな恩恵とは…」
奈良県内で奈良、大和郡山、橿原3市から奈良市内に通う30~50代の男女会社員5人に聞いたところ、いずれも「ガソリンの消費行動は今までと変わらない」と回答した。HVに乗る40代男性会社員は毎月3回ほど給油し、ガソリン代は約1万5000円。1リットル約15円下がると1カ月当たり1200円ほど節約されるが「有り難いが、そこまで大きな恩恵とは感じない。これまで通り、使ったガソリン分を給油するだけ」と話す。
県内のGSなど約160事業所が加盟する県石油協同商業組合によると、近年はHVなどが増えた影響もあり、販売に苦戦する店が増えているという。同組合は「ガソリンは価格に関係なく必要な人が必要な分だけ給油する傾向が強い。値下がりしたからといって、需要が大きく増えるものではないだろう」と話した。
ガソリン価格の内訳は?
暫定税率廃止で話題になったガソリン価格はどのような内訳なのか。実は、今は価格の4割程度が税金という異様な構造になっている。例えば1リットル当たり170円の内訳をみると、石油石炭税2・8円▽ガソリン税53・8円▽消費税15・45円――で三つの税の合計72・05円がかかり、本体分は97・95円にとどまる。
本来のガソリン税は28・7円だが、ここに暫定税率分25・1円が上乗せされていた。暫定分が来年にはなくなることで、ガソリン価格が下がると見込まれる。ガソリン価格に税が占める割合も3割程度に下がる。本体分は、各GSが仕入れ値に自社の利益分を上乗せして設定しているため、GSによって価格差がある。
GSは消費者が給油するセルフ式と、スタッフが給油してくれるフルサービス式がある。地域性もみられるが、価格は一般的にフルサービスが5~10円高いことが多い。【山口起儀】
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