海上自衛隊の「もがみ」型護衛艦の模型。NECの軍艦用通信アンテナが搭載されている(5月、千葉市の幕張メッセで開かれた防衛装備品の国際展示会)

NECは13日、2026年3月期末までに防衛事業の担当人員を21年3月期に比べて1600人増やす方針を明らかにした。今期が最終年度となる中期経営計画の5年間で約4割増やす計算だ。高市早苗首相の就任や防衛予算増の追い風を捉え、レーダーや通信システムなどを拡販する。26年度以降も増員や生産設備の増強を進める計画だ。

同日、オンラインで開いた投資家向けの説明会で方針を示した。24年の説明会では26年3月期に担当の人員を21年3月期比1200人増やす計画を掲げたが、今回はさらに400人上積みした。防衛事業全体の人員数は明らかにしていない。

防衛関連の生産設備について27年3月期以降、新たに2万平方メートル増床する計画も示した。具体的な場所は明らかにしなかった。現在、防衛関連は府中事業場(東京都府中市)で主に生産している。すでに25年3月期に新棟が稼働しており、21年3月期比で約1.3倍に増床した。

NECは航空自衛隊向けの移動式通信機器を手掛ける

NECはミサイルや艦艇・戦闘機などを手掛ける三菱重工業などと異なり、センサーやネットワーク、IT(情報技術)の分野に強みがある。防衛装備庁の中央調達額では3〜4位を維持しているという。

航空宇宙・防衛(ANS)事業は25年3月期で売上高3700億円と全体の1割程度だ。同事業を統括する永野博之執行役は「防衛省が今一番力を入れているのは宇宙・サイバー・(無人機を妨害するといった)電子戦だ。これらの領域は全て得意としている」と受注拡大に意欲を示した。

13日の説明会では海底ケーブル事業についての戦略も触れた。社会インフラ部門を統括する山品正勝執行役は、ケーブルの敷設や保守のための専用船について「保有する意思はある。向こう5年で最大5隻は必要」と述べた。

NECの海底ケーブル工場(2月、北九州市)

NECはこれまで専用船は案件ごとに長期チャーターなどでまかなってきた。ただ、通信需要の高まりで専用船の需給は逼迫している。山品氏は「チャーターだと一番重要な敷設の能力が落ち競争力がそがれる」とし、今後は自社保有も視野に入れることを明らかにした。

専用船の購入には1隻当たり数百億円がかかるほか、維持費も必要だ。経済安全保障が重要視される中、政府も海底ケーブルの支援に力を入れる方針を示している。NECは政府支援を得ることで、コストを抑えながら専用船を確保していく腹づもりだ。

専用船を保有する企業自体のM&A(合併・買収)についても山品氏は「一つの手段として常に考えている」と述べた。

海底ケーブルは米サブコム、仏アルカテル・サブマリン・ネットワークス、NECの大手3社でシェア9割を握る。そのうちNECは約25%のシェアを持つ。他社が手薄なアジア太平洋で案件を開拓するほか、大容量通信など自社技術の強みを生かして、世界シェアを35%に引き上げる目標を掲げる。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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