「髪もボールもしっかりキープ!」「集中力もヘアゴムもぶちキレない!」――。異色のキャッチコピーに彩られたヘアゴム「KKOOR(くくーる)」が、サッカーJ3福島ユナイテッドのホーム戦などで販売され、口コミで人気を集めている。同チームのユニホームスポンサーを務める自動車部品メーカー「NOK」(本社・東京都港区)が、同社初の消費者向け商品として開発した。自社技術を活用して耐久性が高く、髪をしっかり固定できつつ、外すのは簡単という優れものだ。
NOKは1941年創業で、85年に日本オイルシール工業から社名変更した東証プライム上場企業。自動車の回転軸を密封しつつ潤滑させる部品「オイルシール」で国内シェア70%。68年に福島市に進出した。自動車部品製造というBtoB(事業者向け)の「知る人ぞ知るメーカー」で、地域社会との接点づくりが課題だった。
2013年、神奈川県藤沢市の同社技術本部に勤務していた古賀晶子さんが、社員の子どもたちを招いたイベントでお土産に自社製のゴムパッキンを渡したところ、手首に巻いて帰っていたのを見て「これはヘアゴムに使えるのでは」とひらめいた。同社はゴム素材の配合技術を高めており、8万8000種類もの「レシピ」を保有。この強みを生かせると考えた。
ただ同社はBtoC(消費者向け)の商品開発経験がなく、19年に思い切って新規事業を扱う部署に提案すると「面白い。型を作ってみよう」と動き出した。通常のヘアゴムは1本のゴムひもを接着剤でとめて輪にしているが、くくーるはそうした部分がないのでそこから切れない。素材のシリコンゴムは滑りやすく、断面が星形で髪との摩擦が少ないので外しやすい。水にぬれてもすぐ乾くのでスポーツや入浴時に向いている。
当初は販路も分からず苦労したが、24年2月にインターネット通販大手の「アマゾン」で販売を開始。カラーバリエーションが豊富に出せるのも強みで、以前から交流のあったJ1川崎フロンターレのチームカラーのヘアゴムを同6月に販売したところ好評を博し、他のスポーツチームからの引き合いも増えた。福島ユナイテッドのチームカラーの赤と黒のヘアゴムも同9月から販売。累計で2万2000本以上売り上げている。
同社の広報担当者は「自治体やスポーツチームとのご縁など、従来はなかった付き合いが増えた。まだまだ知名度の向上とまでは感じないが、接点は確実に増えている」と評価する。【錦織祐一】
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