伊藤忠商事は14日、声優や俳優の音声を登録し、無断利用を防ぐデータベースを立ち上げると発表した。日本俳優連合(日俳連)と連携する。日本には「声の権利」を直接保護する法律がなく、生成AI(人工知能)での声の無断利用が問題になっている。音声を適切に管理・保護することで、収益機会の拡大や海外展開にもつなげる。
2025年度中に音声データベース「J-VOX-PRO(仮称)」を立ち上げる。声優や俳優の声を音源として登録し、コンテンツ作成などで音声利用を希望する企業に対して、声の持ち主本人や所属事務所の許諾を得た上で、音声データを有償で提供する。
データベースでは利用された音声が許諾を得たものかどうかを識別できる「電子透かし」や声紋などの技術を活用し、不正利用を抑制する。俳優や声優一人ひとりの声の利用に関する意思表示も登録する。日俳連に加入する約2500人の俳優や声優を中心に広く登録を呼びかける。
データベース作成やシステム運用は、伊藤忠子会社の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が担う。日俳連が俳優らへの説明やガイドライン策定を担当する。伊藤忠は国内外のコンテンツ事業者などとのネットワークを生かし、声を提供したい俳優らと利用したい企業のマッチング機会の拡大や海外展開を支援する。
生成AIの普及で、人の声から無断で合成音声を作りだして動画投稿サイトなどで拡散するなど「声の権利」を侵害する行為が問題になっている。国内には声の保護を目的とする法律がなく、日俳連など業界3団体は24年11月、生成AI音声を学習・利用する際は本人の許諾を得ることなどを求める声明を発表した。
企業でも声の権利を保護する動きは活発になっている。NTT西日本はAIで合成した音声の流通サービスで、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って許諾を得た音声であることを証明する。東芝デジタルソリューションズ(川崎市)は企業向けのAI音声サービスで、使用する音声が本人の許諾を得たことを示すラベルを導入している。
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