英フランシス・クリック研究所などは肺がん患者の血中にあるがん由来遺伝子と再発リスクの関係を明らかにした(東京大学の唐崎隆弘助教提供)

英フランシス・クリック研究所などの研究チームは、肺がんの手術後の再発リスクを予測することに成功した。血液中に含まれる微量のがん細胞のDNA濃度を調べる検査について、臨床的な有用性を証明した。再発する時期やリスクなどを絞り込むことで、患者に合わせた適切な治療を行える可能性がある。成果は米科学誌セルに掲載された。

肺がんの8割を占める「非小細胞肺がん」は、切除が成功しても、目に見えないような微小ながん細胞が体内に残りやすく、再発リスクが高いといわれる。がんが肺で大きくなっている、またはリンパ節への転移があるようなステージが進んだ状態の患者に対しては、手術後に抗がん剤などを投与して治療するが、再発する患者が多いという。

研究チームは患者の血液に含まれる微量ながん細胞由来の遺伝子(ctDNA)に着目した。米検査会社パーソナリスの協力で、患者ごとに異なる約1800個の遺伝子の変異を調べた。パーソナリスの超高感度の検査手法を使えば、血液中に含まれるctDNAの濃度を1〜3PPM(PPMは100万分の1)まで調べることができるという。

従来は80PPM未満のctDNAを検出することは難しかった。パーソナリスの超高感度の検査手法でctDNAが検出されなかった患者は5年後も約75%の患者が生存していた。一方、ctDNA濃度が80PPM未満だった患者の5年生存率は25%を下回った。濃度が80PPM以上の患者の生存率はさらに低くなった。ctDNAの検出濃度が多いと1年以内に再発する確率が高いこともわかった。

ctDNAはがんの遺伝子変異を調べる目的などで一部使用されているが、再発リスクを調べる目的では実用化されていない。研究に携わったフランシス・クリック研究所の唐崎隆弘客員研究員(東京大学助教)は「(検出感度が高い手法が実用化されれば)再発リスクが高い人にはより強力な化学療法を、リスクの低い人には治療を弱めたり期間を短くしたりするなど、患者に応じた治療につながるだろう」と話す。

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