伊藤忠商事は伊藤忠食品を上場子会社にもつ

米アクティビストファンドのサファイアテラ・キャピタルは14日、伊藤忠商事の上場子会社である伊藤忠食品の取締役会に対し、非公開化による親子上場の解消を提案したと発表した。送付した書簡のなかで、伊藤忠商事による株式公開買い付け(TOB)を通じた完全子会社化を受け入れ、企業価値を高めるよう訴えた。

サファイアテラは、TOB価格は13日の終値(9300円)に50.5%の上乗せ幅(プレミアム)をつけた1万4000円程度が「適切だ」と主張した。サファイアテラは伊藤忠食品の株式を約1%持つ。伊藤忠商事は伊藤忠食品に52.46%を出資している。

サファイアテラは「伊藤忠食品がもつ食品卸売事業の競争優位性を高く評価しているが、現在の株価は企業価値を適切に反映していない」と強調。「上場子会社として親会社の影響を一定程度受けることから、ともすれば少数株主との利益相反の可能性があり、企業価値が株式市場で十分に評価されない原因である」としている。

伊藤忠食品に対し、完全子会社化を選択せずに上場を維持する代替策も提案した。その場合、同社が余剰現金などを使って「1株あたり合計で7000円、総額887億円の特別配当を行い、株主に還元すべきだ」とした。

サファイアテラの細水政和・最高投資責任者(CIO)は取材に対して「金融庁や東証は余剰現預金や親子上場について厳しく言うようになっており、株主として積極的に発言すべきだと考えた」とコメントした。

一部報道などを受けて、伊藤忠食品の株価は制限値幅の上限(ストップ高水準)となる前日比16%高の1万800円まで上昇した。

伊藤忠食品は書面を受け取ったことを認めた上で「TOBについては当社が回答する立場にはない。株主還元の重要性を認識しつつ、企業価値向上に向けた投資や配当などについては引き続き議論を継続しながら株主の期待に応えていく」とコメントした。伊藤忠商事の広報はコメントを控えた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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