パナソニックコネクトの電子部品実装機(22日、山梨県昭和町)

パナソニックコネクトは22日、電子部品実装機を製造する甲府工場(山梨県昭和町)の稼働から40周年を迎え記念式典を開いた。世界市場のシェアは3割程度と首位を堅持する。新型コロナウイルス流行で在宅勤務が普及した際のノートパソコンなどの需要は一巡したが、足元では人工知能(AI)サーバー向けで販売を増やしてきた。

「何年たっても壊れない品質と、超短納期にこたえるモノづくり力。この2つの強みで世界ナンバーワンを何十年にもわたって維持している」。同日午後、会場に集まった約400人の社員を前に高橋良太朗・回路形成プロセス事業部長は強調した。

電子機器の基板には微小な電子部品が載っている

実装機は電子機器の基板に微小な電子部品を載せていくための装置だ。ICなどの半導体やコンデンサーは小型化が進む。1つのスマートフォンには数千個の電子部品が組み込まれている。パナソニックコネクトの装置は1秒間に30個程度という高速で実装が可能だという。

かつて電子部品の実装は手作業だった。松下電器産業(現パナソニックホールディングス)がテレビなどを製造する際の装置として社内向けに開発した。1973年に外販を開始し事業化した。当初は大阪府門真市で製造していたが、生産台数の増加を受けて1985年に甲府工場を稼働させた。現在は大阪府のほか、中国とシンガポールでも生産するが、甲府工場が大部分を製造している。

実装機の出荷台数は累計約13万台に達する。現在も世界中で約8万台が稼働しており、スマートフォンの基板の4割ほどはパナソニックコネクトの装置で部品が実装されている計算になるという。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務者が増加したことでノートパソコンやタブレット端末が普及し、電子部品を基板に載せる実装機の市場も拡大した。日本ロボット工業会によると、国内メーカーの実装機の出荷台数は21年に1万9686台と20年比で28%増加した。

その後は反動減が続いたが、直近は持ち直してきた。24年の出荷台数は1万3789台と、23年比で11%増えた。生成AIの学習や推論にも使われるAIサーバー向けが伸びている。電気自動車(EV)の普及や、自動車の電装化も追い風になってきた。甲府工場の野中聡工場長は「景気の山や谷はあるものの、近い将来過去最高を更新するのではないか」と予測する。

野中工場長は「今後も登場する新たな電子機器を支える技術を進化させ、世の中に貢献したい」と話した(22日、山梨県昭和町)

米トランプ大統領の関税政策によって、世界中のメーカーが関税が低い地域に生産拠点を移す動きも販売増につながっている。実装機の市場は中長期的に拡大が予想される。調査会社のモルドール・インテリジェンスによると、実装機と関連機器の市場は29年に88億7000万ドル(約1兆3100億円)と、24年比で4割増加する見通しだ。

実装機はパナソニックHDなど日本のメーカーが世界に先駆けて開発し、今でも世界シェア上位をほぼ独占している。「JISSO(実装)」という言葉は海外でも通じるほどだ。パナソニックコネクトの樋口泰行最高経営責任者(CEO)はビデオメッセージで「今後ますます飛躍し、コネクト全体の経営によりいっそう貢献されることを期待している」と語った。AI普及の追い風に乗りつつ、パナHDを支える事業として成長が求められる。

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