
三井住友建設は18日、臨時株主総会を開いた。株式併合の特別決議を可決し、発足後22年で上場廃止が決まった。バブル崩壊を経て財閥系同士が統合したが、マンション工事の失敗と経営混乱で再び苦境に陥った。インフロニア・ホールディングス(HD)傘下入りで社名は消える見通し。今後は強みの海外工事をテコに再起を図る。
臨時株主総会は同日午前に東京都内で開かれた。インフロニアHDがTOB(株式公開買い付け)を実施し、三井住友建設の株式を議決権ベースで80.61%取得済み。今回の総会では傘下入りに伴う上場廃止に向け、5000万株を1株とし、少数株主の持ち分を1株未満とする株式併合の特別議案を諮った。
議案は賛成多数で可決し、12月19日の上場廃止が決まった。TOBに応じなかった少数株主分は強制買い取りとなる。
インフロニアHDは今後、三井住友建設の社名を変更する予定だ。総会の議長を務めた柴田敏雄社長は「三井住友の名を失うことは喪失感がある。だが、単独での存続よりもインフロニアHDとの経営統合が未来への最良の選択だったと確信している」と述べた。
総会には18人の株主が出席した。旧住友建設の社員だった80代男性は「住友の名前が誇りだった」と話す。「孫に聞かれても名前のよくわからない会社になってしまう」とこぼした。
三井住友建設は03年に三井建設と住友建設が合併して誕生した。バブル崩壊後、保有する不動産の含み損や建設投資の急減により、ゼネコン各社の経営が急速に悪化した。

建設業界において合併は工事の入札機会が減るために選ばれてこなかった。ただ01年に当時の住友銀行とさくら銀行(旧三井銀行)が合併して三井住友銀行が誕生。これを皮切りに三井・住友の流れをくむ企業同士の統合が進んだ。
三井・住友の合併は損保やクレジットカードといった金融会社が中心で、三井建設と住友建設のような実業を営む企業では珍しい。不動産バブル崩壊の影響が大きいうえ、旧三井建設が高層マンションを、旧住友建設は橋梁を中心とした土木工事をそれぞれ強みに持ち、事業重複が少ない点も合併を後押ししたようだ。
合併後は2社の技術を組み合わせて超高層免震マンションを実現させるなど、互いを補完し合った。10年代に入ると、東日本大震災からの復興需要や東京五輪・パラリンピックの開催決定に伴う建設需要などを追い風に、減少していた建設投資は上向きに転じた。

だが、さらなる成長を追って臨んだマンション分野で雲行きが怪しくなる。15年、横浜市の大型マンションが施工不良で傾いていることが発覚。協力会社によって工事データが改ざんされていることが明らかになった。元請けとして工事に携わった同社は住民や株主への説明に追われた。
追い打ちをかけたのが、東京都港区の複合街区「麻布台ヒルズ」で計画されたタワーマンション工事だった。「斜面にあって地下鉄も近接する難しい立地」(大手ゼネコンの関係者)にてこずり、マンション部材の品質管理のミスも重なった。工事の遅れで引き渡しがずれこみ、三井住友建設は22年3月期から2期連続で連結最終赤字に陥った。

業績悪化と時を同じくして、メインバンクとの間で経営陣も巻き込んだ混乱も生じていたようだ。同社の赤字転落が発覚する直前、三井住友銀出身の近藤重敏氏が社長に就いた。
その後、社外取締役を含む一部の取締役が、近藤氏の退任を了承するように三井住友銀に求める事態に発展。24年4月には近藤氏に代わり、生え抜きの柴田氏が社長に昇格した。
こうした内外のトラブルを抱えつつ、手元のキャッシュが減って借入利息の負担も膨らんだ。単独での成長には限界が見えるなか、三井住友建設は同業との統合に動く。建設業界のある上場大手幹部は「三井住友建設の買収について相談を受けた」と明かす。最終的に前田建設工業を傘下に持つインフロニアHDによる買収が決まった。
インフロニアHDと三井住友建設を単純合算した連結売上高(25年3月期、インフロニアHDは国際会計基準)は約1兆3100億円。業界順位は長谷工コーポレーションを抜き、大手に規模で迫る6位となる。

インフロニアHDが新たな成長の柱として掲げるのが、海外のインフラ運営事業だ。三井住友建設は建設工事を通じて、インドやフィリピンなどのアジア地域に豊富な事業基盤を抱える。インフロニアHDの岐部一誠社長は「培ってきた公共施設の運営経験を生かす」としており、三井住友建設に期待を寄せる。
(橋本剛志、黒沢亜美)
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