
JSRは19日、2025年4〜9月期連結決算(国際会計基準)の説明会をオンラインで開いた。売上高にあたる売上収益は前年同期比11%増の2112億円、構造改革費用などを除いたコア営業損益は260億円の黒字(前年同期は44億円の赤字)だった。事業別で1億円の赤字だったライフサイエンスについては、引き続き業績改善に取り組むとした。
ライフサイエンス事業の売上収益は55%増の444億円だった。コア営業損益は赤字が続くが、前年同期の264億円から1億円へと縮小した。25年3月期に医薬品の開発・製造受託(CDMO)の新工場の収益を一部取り消し、修繕による稼働停止もあって大幅な赤字となった。その影響が今期なくなったことによるという。
堀哲朗社長はライフサイエンスについて「1億円の赤字は満足ではないし、CDMOの生産が安定しているわけではない」と話す。品質関係の人材を送りこんで改善へ対策を進めているとし「もう少してこ入れしないと普通の状態にはならない」と説明した。
半導体材料などのデジタルソリューション事業は好調で、業績全体をけん引する。売上収益は9%増の1175億円、コア営業利益は11%増の274億円だった。人工知能(AI)の需要を受け、半導体基板に回路を描くリソグラフィーの材料などが伸びた。合成樹脂事業は国内の自動車需要停滞で販売量が減ったが原料価格が下がり増益となった。
課題である負債の圧縮は少しずつ進む。産業革新投資機構(JIC)傘下のJICキャピタルによるJSRの買収総額は、有利子負債を含めて1兆円に達した。流動負債のうち社債および借入金は25年3月から同年9月にかけて139億円減らし265億円となった。財務キャッシュフローは4〜9月期で176億円のマイナスでうち155億円をローン返済に充てた。

借入金の返済はライフサイエンスを中心に事業売却を進めることで前倒しする。25年4月に体外診断用医薬品などの事業をトクヤマに820億円で売却すると発表し、同年10月1日付で完了した。26年にはバイオ薬関連材料をドイツのメルクに、医薬品開発業務受託機関(CRO)事業を中国企業に売却する手続きが完了する。
ライフサイエンスを「非中核事業」と位置づけて切り売りを進めている。既に明らかにした一連の売却を除くと、CDMO事業と生体試料を手掛ける部門のみが残る。
JIC傘下入りを決めた際にJSRは半導体材料業界再編の主導に意欲をみせたが、まだその段階には至っていない。堀社長は「(企業買収向けの)LBOローンとライフサイエンスの2つをきれいにして成長路線に乗れる。その時の世の中の状況をみて考える」とし業績改善を優先する方針を示した。
(茂野新太)
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