自民党の税制調査会は20日、総会を開き、2026年度税制改正に向けた議論を本格化させた。少数与党の状況下、高市早苗政権は日本維新の会との連立政権として初めての税制改正に臨む。さまざまな利害が絡む税制の課題に、どのような解を見いだすのか。
「投資の促進、賃上げ、物価への対応など重要な課題について税制面からしっかりと後押ししていく。国民目線で開かれた税調の姿を実現する」。総会の冒頭、小野寺五典税調会長はこう意気込みを語った。
焦点は、所得税がかかり始める「年収の壁」を引き上げる仕組みの設計と、ガソリンなどの暫定税率廃止に伴う代替財源探しだ。
年収の壁は、25年度税制改正で103万円から160万円に引き上げられた。高市首相は更なる引き上げに前向きだが、その水準を決める要素の一つである「基礎控除」に物価上昇を今後どう反映させるかが検討課題となる。
自民は24年、国民民主党、公明党と「178万円を目指して引き上げる」ことに合意した。自民は消費者物価に基づく引き上げが妥当との考えだが、国民民主は最低賃金の上昇率に連動させるべきだと主張する。
昨年と同様に少数与党であるだけに、与党は国民民主などの野党から予算案への賛成を取り付ける必要があり、野党への配慮も求められる。小野寺氏はこの日、報道陣の取材に「できるだけ多くの野党と意見交換したい」と述べた。
暫定税率の代替財源を巡っては、与野党6党の合意で、法人税に関する租税特別措置(租特)の見直しなどを検討し、25年末までに「結論を得る」とされた。研究開発税制や賃上げ促進税制などに代表される租特を見直す方針は自民と維新との連立合意文書にも盛り込まれているが、産業界からの反発が予想される。
そのほか、数年に1度の大きな見直しの年となっている自動車関連諸税では、電気自動車(EV)への課税のあり方などが議論になりそうだ。「防衛増税」のうち、先送りされている所得増税を巡る方針なども論点になる。首相は国内投資を促す税制の創設にも意欲を見せており、減収を補うすべが求められる。
21日には維新も税調の総会を開き、本格的な議論を始める。年末までに、両党で初となる税制改正大綱をまとめる方針だ。【井口彩、妹尾直道、遠藤修平】
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