中国政府による日本産水産物の事実上の輸入停止や日本への渡航自粛要請に対する懸念が県内でも広がっている。長崎は漁獲量が全国2位の水産県で、歴史的に中国との結び付きが強く、中国人観光客による消費への期待も大きい。関係者は早期の事態収束を願う。【添谷尚希、百田梨花】
「来年3月までの中国からの予約の約半数がキャンセルされた。不足分をどう補えばいいか……」。中国人観光客を中心としたツアーを手掛ける長崎市の会社の担当者はため息を漏らした。中国外務省が14日に日本への渡航自粛を国民に呼び掛けて以降、中国の大口団体客の予定が相次いでキャンセルされた。
担当者は「新型コロナウイルス禍で落ち込んだ需要が戻ってきたところで戸惑っている。事態の早期収束を願いたいが、中国以外の団体や個人客にシフトせざるを得ないのでは」と語った。
また、県観光連盟にも中国からの団体旅行がキャンセルされたという情報が業者から入っているといい、担当者は「中国の旅行会社は当局の意向に従うと考えられ、今後も団体旅行のキャンセルが続く恐れがある。個人旅行客のキャンセルが増えないことを祈るばかり」と話した。
2023年に止まった中国への県産水産物の輸出の再開に期待していた水産業関係者も困惑する。今月上旬には在長崎中国総領事館の開設40周年を記念して大石賢吾知事が訪中し、上海で県産水産物のトップセールスをしたばかりだった。
県水産加工流通課の担当者は「現地の業者からは好意的な評価を受けていたので非常に残念」と語った。
また、県漁業協同組合連合会によると、県内で養殖されたクロマグロやハマチが韓国などを経由して中国で流通するケースがあり、担当者は「そうした流れが影響を受ける可能性もある。年末の価格上昇を待って出荷を予定していた業者もあると思われ、痛手になりかねない」と警戒する。
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