21日に閣議決定された政府の経済対策には、日本が米国との関税交渉で協力に合意した対米投資を後押しする施策も盛り込まれた。民間企業に出資や融資、融資保証を提供する国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)には財政措置を実施するほか、日米間で進める造船業の再生に向け、官民で1兆円規模の投資を目指すことになる。
関税交渉では、米国による自動車関税や相互関税の引き下げと引き換えに、日本が約5500億ドル(約80兆円)の対米投資を約束。10月の日米首脳会談でも改めて合意内容を確認したほか、造船分野については作業部会を設置した。それを受け、今回の経済対策では、「造船業再生ロードマップ」を年内に策定し、10年間の基金を創設。3年程度の事業に必要な予算措置をしていくことにした。
このほか、首脳会談で合意したレアアース(希土類)など重要鉱物の供給確保についても、出資支援などで供給源の多角化や備蓄の強化を推進する。南鳥島周辺海域でのレアアース生産に向けた研究開発も拡大する。
対米投資への支援を手厚くした一方、トランプ米政権による高関税措置による足元への影響は深刻になっている。17日に発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP)は、トランプ関税による影響で年率換算で前期比1・8%減少となり、1年半ぶりにマイナス成長になった。
対策では、影響を受けた中小企業の資金繰り支援として、日本政策金融公庫などの「セーフティネット貸付」で、売上高か利益率が5%以上減少した事業者を対象に金利を引き下げるほか、補助金の優先採択や補助率の引き上げなども行う。ただ、今回の対策に伴う大規模な財政出動によって金利上昇と円安を招く懸念も強まっており、こうした支援策で経済の減速を防げるかは見通せない。【古川宗】
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