公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 長野県内のガソリン価格を巡りカルテルを結んだとして、公正取引委員会は26日、県石油商業組合・北信支部の独占禁止法違反(事業者団体による競争制限)を認定し、再発防止を求める排除措置命令を出した。北信支部加盟のガソリンスタンド(GS)17社に対し、計1億1658万円の課徴金納付も命じた。

 カルテルに関する情報は県石商の本部にも共有されていたとされ、公取委は「支部に対する命令や示唆があったわけではないが、事実上容認していた」と指摘。同日、本部に再発防止などを申し入れた。

 公取委によると、北信支部は遅くとも2024年12月16日以降、支部管轄地域のGSで扱うレギュラーガソリンやハイオクガソリンの店頭表示価格(1リットル当たりの小売価格)について、値上げや値下げの幅、時期などをあらかじめGS事業者に伝え、不正に調整した。

 具体的には、北信支部長が国の燃料油補助金の減額状況や石油元売りによる仕切り価格(卸価格)の変動状況を確認したうえで、小売価格の改定額を決定。副支部長や地区長を通じて電話やファクスで支部員に周知していた。また、県石商本部の職員経由で役員にも改定額を伝えていた。

 県石商には八つの支部があり、長野市などを管轄する北信支部には約70の事業者が加盟している。事業者は公取委の調査に「以前から小規模事業者を守る目的などで価格競争を回避していた」などと説明。カルテルが結ばれていた当時、長野県内全体や北信支部管内の小売価格は全国平均と比べて10~12円程度高く設定されており、公取委は「ダイレクトに消費者に影響が出ていて独禁法上の問題があった」としている。

 また、公取委は26日、北信支部に加盟していないJAグループなどのGS3社に対しても、独禁法に基づく警告をした。改定額などの情報を北信支部員から継続的に入手し、カルテルに関与したという。

 カルテルを巡っては、公取委とは別に、県石商も弁護士らによる第三者委員会を設置し、6月に報告書を公表。北信を含む3支部で店頭表示価格の不正な調整などが行われ、本部が黙認するなど「組織ぐるみと評価せざるを得ない」と結論づけていた。【山田豊】

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