
関西電力は25日、原子力発電所が立地する福井県などの自治体に対し、年50億円を基準に資金を寄付をする仕組みを構築したと発表した。自治体は寄付金を医療や交通インフラなど地域振興策に充てる。関電は福井県内で原発7基を稼働している。原発の安定稼働に向けた地域理解を深めるため、継続的な支援体制を築く。
関電がまず信託銀行に資金を拠出する。福井県や原発が立地する各町は、事業ごとに信託銀行に寄付を申請する。申請は弁護士や地域振興策の専門家などによる第三者機関が審査し、認められれば寄付が実行される仕組みだ。
2025年度から支給を開始する。金額は50億円を基準に、前年度の原子力利用率などを踏まえて算出する。25年度はこれに基盤財源として150億円を加えて拠出する。この仕組みを続ける期間は未定で、経営状況などを踏まえながら判断するという。
同日、関電の水田仁副社長が福井県を訪問し中村保博副知事と面談した。水田副社長は「継続的な資金拠出の仕組みとして提案する。地域の活性化に貢献していく」と説明。中村副知事は「新たな仕組みを明示いただいたことを評価する。継続的な運用をお願いしたい」と答えた。
関電はこれまで自治体の事業ごとに個別に寄付をしてきた。ここ数年、関電グループが福井県に限らず寄付した金額を合わせても年1億〜2億円程度で、新しい仕組みでは金額規模が大きく拡大することになる。関電は23年から福井県内の原発が全て稼働する「7基体制」に入り、原発の運転が増えていることなどが支援拡大の理由と説明する。
原発が立地する地域への支援については、21年度から国や関電、福井県などが「共創会議」を立ち上げて議論してきた。関電はこれまでグループ会社が立地地域内にコンテナ型データセンターを新設を決めたり、水素事業を拡大したりするなど地域振興策を進めてきた。一方、自治体からは資金的な支援を要望する声も上がっていた。
原発の安定稼働には地域の理解が欠かせない。福井県はかねて40年超の原発の稼働継続の条件として使用済み核燃料の県外搬出を求めており、関電は2月、フランスへの搬出量を倍増する計画などを説明。翌月に県がこれを容認し、40年超原発の運転継続が可能になった経緯がある。
関電は7月、美浜原発内で原発新設に向けた調査を始める方針も発表している。脱炭素電力の需要が拡大する中、原発の地元で理解を得る重要性はさらに高まっている。原発事業をリードする関電の地域振興策は、国内全体における原発活用に向けた地域連携のあり方としても注目される。
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