大阪・関西万博後も消費に衰えは見えず、近畿の景況感は3期連続で改善した

日銀大阪支店が15日発表した近畿2府4県の12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業でプラス15と前回調査(9月)から2ポイント改善した。改善は3四半期連続。半導体関連を中心に生産活動が堅調に推移している。大阪・関西万博閉幕後も域内消費の増加傾向が続いていることも支えとなった。

業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いた値。調査対象企業は1341社で回答率は99.4%。調査期間は11月11日〜12月12日。

製造業は3ポイント上昇のプラス9。生成AI(人工知能)の普及に伴って、半導体の製造に必要な汎用機械や化学の景況感が上向いている。米国の関税政策がもたらす先行き不透明感が和らいだことから、自動車をはじめとする輸送用機械や鉄鋼でも改善がみられた。

非製造業は2ポイント上昇のプラス21だった。小売りやサービスでは万博後もインバウンド(訪日外国人)需要に衰えは見えないという。日本人の消費についても秋の行楽シーズンに向けた宿泊や飲食需要などが堅調に推移しており、物価高のマイナス影響は限定的とみられる。

2025年度の設備投資(土地投資額除く)は全産業で前年度比8.6%増を見込む。「省人化やAI・データセンターなどの能力増強に関わる投資は底堅い」(日銀大阪支店)

一方で人手不足は深刻だ。人手が「過剰」とする割合から「不足」を引いた雇用人員判断DIは全産業で3ポイント悪化のマイナス34となった。「採用競争が激しくなっており、企業の想定より人材を確保できていない状態だ」(同)という。

先行きのDIは全産業でプラス8と、現況から7ポイントの悪化を見込む。日中関係の悪化が重荷となっているとみられる。

台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁を受けて、中国政府は11月中旬に自国民の日本への渡航自粛要請を出した。日中間を結ぶ航空便の運休や欠航が相次いでいる。日銀大阪支店によると、関西企業の8割以上が渡航自粛要請以降に回答を寄せたという。

観光庁などによると、全国のインバウンド消費に占める関西圏の比率は約3割(2024年)に上る。訪日客の中でも特に中国人への依存度が高い。関西の製造業でも電気・電子部品を中心に中国への輸出が多く、さらなる関係悪化への懸念は強い。

(柘植衛)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。