東京大学の研究チームは免疫反応を抑えるステロイドが、「オプジーボ」などのがん免疫薬の治療効果を高める可能性があることをマウスを使った実験で確認した。従来はステロイドの使用はがん免疫薬の効果を低下させると指摘されていたが、効果的に使用することで、新たな治療戦略につながることが期待される。

オプジーボや「キイトルーダ」といったがん免疫薬は、免疫の働きを抑えるブレーキを解除し、免疫細胞を活性化させ、がんを治療する。一方、「デキサメタゾン」などのステロイドは、免疫の働きを抑え、免疫による炎症反応などを抑える効果がある。化学療法後の副作用で起きる嘔吐(おうと)などの治療に使われることもある。
東京大学のカブラル・オラシオ准教授らは、乳がんを再現したマウスに対して、デキサメタゾンやがん免疫薬を投与し、治療効果を比較した。デキサメタゾンとがん免疫薬の両方を投与したマウスでは、どちらか片方を投与したマウスより生存期間が伸びた。
デキサメタゾンの投与によって、がん組織の血管の環境が改善されていた。結果として免疫細胞がより深い場所まで浸潤し、免疫細胞が活動しやすい環境となっていた。今後は他のがんや治療薬についても動物などを使った研究を進める。
研究成果をまとめた論文は米科学誌「アドバンスト・サイエンス」に掲載された。
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