大阪ガスが2026年から運転を開始する姫路発電所(18日、兵庫県姫路市)

大阪ガスは18日、2026年に運転開始する火力発電所「姫路天然ガス発電所」(兵庫県姫路市)を報道陣に公開した。所内の2基が稼働することで、同社の火力発電の出力は現在の1.6倍に高まる。大ガスの国内における事業別の経常利益ではすでに電力がガスを上回っている。データセンターの新増設に伴う電力需要の高まりを商機ととらえ、さらなる拡大を目指す。

姫路発電所の運営主体は大ガス傘下のDaigasガスアンドパワーソリューションとなる。岡下裕樹所長は「グループの基幹電源としての役割を果たす」と抱負を述べた。

敷地内には、高さ40メートル、幅500メートルにわたるコンクリートの壁が目立つ。住宅地に近いため、防音の役割を果たすという。内部の建屋では、商業運転に向けた試運転としてガスタービンや発電機が既に動いていた。

大阪ガスの姫路発電所には高さ40メートル、幅500メートルの防音壁が建てられた(18日、兵庫県姫路市)

26年1月に1号機、5月に2号機を稼働する。大ガスの火力発電の出力は現在の200万キロワットから320万キロワットに高まる。これはガス会社による自社保有の発電能力としては国内最大になるとみられる。30年度には3号機の稼働も計画している。発電分は法人と個人両方への販売を見込む。

生成AI(人工知能)の普及に向けてデータセンターの新増設が全国的に広がっている。関西でもKDDIやソフトバンクが堺市のシャープの工場跡地に新設する予定だ。データセンターの運用にかかわる大量の電力需要をまかなう上でも今回の新発電所の存在意義は大きい。

姫路発電所の建設を決めた19年にはAI関連の新しい電力需要は想定していなかったが、大ガス幹部は「結果として絶好のタイミングでの稼働となった」と話す。資材価格の高騰に先駆けて工事に着手したことで建築費用の増加を抑えることもできた。

姫路発電所では将来的に二酸化炭素(CO2)排出が実質ゼロとなる都市ガス燃料「eメタン」を使うことも視野に入れる。火力における脱炭素の取り組みでも先進性を示したい考えだ。

1995年の発電事業の自由化を受けて、大ガスは2009年に「泉北天然ガス発電所」(大阪府高石市・堺市、出力110万キロワット)を稼働させた。16〜17年に電力・ガスの小売りが全面自由化されたことや脱炭素の機運の高まりから、バイオマス発電所を相次ぎ導入するなど事業を拡大していった。

25年7月に袖ケ浦バイオマス発電所(千葉県袖ケ浦市)、8月に和歌山御坊バイオマス発電所(和歌山県御坊市)の運転を開始し、再生可能エネルギーの導入も広げている。大ガスの25年3月期の連結経常利益のうち、2割強にあたる411億円を国内の電力事業が占めた。本業のガス事業(364億円)を上回る。

特に近畿エリアの電力・ガスの販売では関西電力と激しい競争を繰り広げてきた。大ガスとしては自前の発電能力を高めることでコスト競争力をつける必要があった。

今後は蓄電所も拡大していく。天候や時間帯によって発電量に差が生まれる太陽光や風力などの再エネを充放電で調整する施設となる。25年夏には同社初となる蓄電所を大阪府吹田市で稼働したことを皮切りに、佐賀県武雄市にも新設した。全国で数十カ所程度の蓄電所運用を想定している。

(中村信平)

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