今年4月に新規就農した栃木県さくら市の好田(よしだ)郁弥さん(35)、萌菜美さん(34)夫婦が、5棟のビニールハウスで育てた「とちあいか」の初収穫を迎えた。「甘くておいしい」と、できばえに手応えを感じており、栽培したイチゴを食べてもらう喜びをかみしめている。【有田浩子】
2人は富山県出身。郁弥さんは大学卒業後、栃木県内の企業に就職。2018年に萌菜美さんと結婚した。農家出身ではなく、農業は身近ではなかったというが、「いつか2人で農業をやりたいね」と以前から話し合っていたという。
30歳を過ぎ、始めるなら1年でも早くと「転職するぐらいの感覚」(郁弥さん)で、自宅のあるさくら市のJAしおのやが独自に実施している「新規就農者育成研修事業」を昨年4月から2人で受講。イチゴの育苗から収穫までのほか、ナス、アスパラガス、メロン、春菊など一通り学んだ。
最初から「イチゴ」農家と決めていたわけではないが、研修を受け始めてからは「イチゴ」に絞り、市内に土地も探し始めた。市農業委員会のあっせんで同市長久保の、すでに2棟のビニールハウスが建っている畑を借りることができた。
今年4月1日から、作業をスタート。新たに3棟のビニールハウスを建て計13・5アールでうねを作った。矢板の事業者からとちあいか8500株の苗を買い、9月に定植、マルチングを行った。
JAしおのやのいちご部会の生産者が2週間に1度ぐらい訪れ、様子を見ては、水や肥料などの加減をアドバイスしてくれたほか、研修仲間同士で、株の状態を見合ったりしたという。
11月27日から収穫を開始。4センチぐらいの大きい粒が毎日収穫できているといい、「いろんな人の助けを借りてここまで来た。6月まで収穫できるよう管理をしっかりしていきたい」と気を引き締める。来年からは苗も自分たちで育てるという。
収穫したイチゴは全量をJAしおのやに出荷し、県内外で販売されている。将来的には「インターネットでの販売や加工品などさまざまなことにチャレンジしたい」と言う。萌菜美さんは「栃木に来て、イチゴが好きになった。その思いを食べた人みんなに感じてもらいたい」と話す。
「とちあいか」、年100人参入目標
イチゴ生産量日本一が半世紀以上続く「いちご王国・栃木」。県が開発して2020年から本格出荷されている「とちあいか」は比較的育てやすく、収量が多く、傷みにくいことから「とちおとめ」からの転換が進んで主力品種として拡大している。
22年産は栽培面積の10%だったが、今秋から収穫が始まった26年産では9割を占めるまでになった。JA全農とちぎは、26年産の目標販売額を過去最高の325億円としている。
県やJA、生産者団体は今年11月、新たないちご戦略(25年11月~30年度)を策定。「とちあいか」のポテンシャルを最大限に引き出し、出荷量の増加と品質のさらなる向上を図るとし、(1)県内外・農内外からの新規就農者の受け入れ拡大(2)関西や国外へのシェア拡大(3)観光いちご園の魅力度向上――などを目指す。
県内でイチゴを志向する新規自営就農者は25年度調査で83人。新規就農者の約4割をイチゴが占める。いちご戦略では年100人の新規就農を目指している。
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