
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などは、着色不良や日焼けといった温暖化による果物の被害を予測するシステムを開発した。農業気象データをもとに、果物の種類や発育状況、圃場の位置情報を活用した。地球温暖化が果物生産に及ぼす影響は年々深刻になっており、損害や対策コストの低減に貢献すると期待される。
果物は温暖化の影響を受けやすい農作物だ。農研機構によると夏季の高温による着色不良や日焼けの発生が増えているほか、春先に暖かくなり開花期が早まりやすくなったことで、霜が降りて花が傷つく「晩霜害」のリスクも高まっているという。
開発したシステムは温暖化に伴って起きやすくなった着色不良、日焼け、晩霜害の3種類の被害を予測できる。例えば、リンゴやブドウの果皮は、夏から秋にかけて高温が続くと十分に色づかない着色不良が起きる。
果実にわたる栄養分を増やして着色を促す様々な対策が取られているが、収穫期の1カ月以上前に講じる必要がある。システムはブドウとリンゴについて収穫期の約40日前から着色不良の発生を予測し、事前に対策を取れるようにした。

高温で果皮が変色する日焼けと晩霜害については、それぞれ5日前と2日前までに被害発生が予測できる。遮光ネットをかぶせたり、圃場に火をたいたりして対策するタイミングの判断に活用できる。システムは生産者団体や自治体などが有償で利用でき、今後は個々の生産者も使えるようなサービスも検討する。
農研機構の杉浦俊彦氏は「事前の被害予測は生産者の負担軽減やコスト削減、果物の価格安定につながり、最終的に消費者にもメリットがある」と話した。
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