説明会に登壇した将来宇宙輸送システムの畑田康二郎・最高経営責任者(23日、東京都中央区)

宇宙スタートアップの将来宇宙輸送システム(ISC、東京・中央)は23日、米国で予定していたロケットの打ち上げに関する離着陸試験を中止すると発表した。米政府閉鎖による混乱で、当局から実験の承認を得られなかったため。トランプ関税による開発費用の増加も影響した。米国事業を縮小し、日本を中心にロケットエンジンを開発する。

同社は2025年内に米国でロケットの離着陸実験を実施する予定だったが、米連邦航空局(FAA)との交渉が進まず断念した。同社の米国法人には約10人の社員が働いていたが、12月末で雇用契約を解消する。

今回の実験中止の要因となったのが、トランプ政権下による混乱だ。ISCは25年6月にFAAに対して試験に必要な申請書を提出していたが、10月に発生した米政府閉鎖により年内の試験許可を受けられなくなった。トランプ関税の発動により、約1億円の追加費用がかさむことも判明した。

ISCはロケットエンジンの開発で、米ウルサ・メジャー・テクノロジーズと24年4月に提携していた。同社との提携は解消しないものの、今後、エンジン開発は荏原やSUIHOスペースイノベーションズ(東京・大田)と連携し、日本を中心とした開発体制に切り替える。2028年3月をめどに、日本から人工衛星を打ち上げる。

23日に開いた説明会で、畑田康二郎・最高経営責任者(CEO)は「国内外の企業とオープンイノベーションを推進していただけに厳しい判断だった。ただ、日本企業との開発の進捗に手応えはある」と述べた。ISCは30年代に有人での輸送を計画しており、時期の変更はないという。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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