浜岡原発の審査を巡るデータ不正の疑いが発覚し、謝罪する中部電力の林欣吾社長㊨(5日、名古屋市)=共同

中部電力が浜岡原子力発電所(静岡県)の再稼働に向けた安全審査で不適切なデータを故意に用い、想定される地震の揺れの大きさを過小に見せていた疑いが発覚した。原発の安全性を揺るがす、許しがたい背信行為だ。

外部の専門家で構成する委員会を設置し、事実関係や背景、組織的関与の有無などを調べるという。不正はなぜ起き、どうして防げなかったのか。説明責任を果たして再発防止を図ることで、国民の信頼を取り戻さねばならない。

原子力規制委員会は7日、同原発の審査を停止すると決めた。山中伸介委員長は「安全確保という最大の責任を中部電が自ら放棄した、前代未聞の事案」と厳しく批判し、同社へ立ち入り検査する方針を示した。

南海トラフ地震の想定震源域内にある浜岡原発は、2011年の東日本大震災後に政府の要請で全機停止した。中部電は再稼働に向けて3、4号機の安全審査を申請し、手続きが進んできた。

同社によれば、耐震設計の前提となる地震の揺れの大きさを示す「基準地震動」を決める際、担当者が都合のよいデータを選んでいた。規制委は23年に基準地震動を了承し、中部電もそれに基づいて安全対策を進めてきた。

安全の根幹にかかわるデータの改ざんは、あってはならない行為だ。山中氏が「審査はすべてやり直し」と述べたのは当然だ。

不正は昨年2月、規制委への外部通報を端緒に、社内調査を行って明るみに出た。浜岡原発では昨年11月、安全対策工事の手続きでも不正が発覚した。法令順守の意識の欠如や、電気事業連合会の会長を務める林欣吾社長ら経営陣のガバナンス(企業統治)不全が厳しく問われる。

生成AI(人工知能)の普及で電力需要の急増が見込まれるなか、安定供給と脱炭素を両立させる解として原発の重要性は増す。政府は昨年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画に「原発の最大限活用」を明記した。

昨年末には東京電力ホールディングス柏崎刈羽原発と北海道電力泊原発の再稼働へ地元同意を得られたばかりだ。今回の不正はこうした機運に冷や水を浴びせた。

何よりも安全・安心が最優先であることは東電福島第1原発事故の最大の教訓だったはずだ。震災からまもなく15年、大切な合言葉を掛け声倒れにしてはならない。

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