
【ニューヨーク=川上梓】米ゼネラル・モーターズ(GM)は8日、2025年10〜12月期に電気自動車(EV)や中国事業の再編で71億ドル(約1.1兆円)の費用を計上すると発表した。トランプ米政権がEV購入の税額控除を廃止し販売が急減した。米フォード・モーターもEV関連で3兆円の巨額費用を計上する。中国に対抗する競争環境の中、米自動車大手の苦境が新たな再編を促す可能性もある。
販売4割減 EVで60億ドル計上
EV関連では生産や販売計画の見直しで計60億ドルの関連費用を計上する。ミシガン州の工場でのEV生産能力削減に伴う18億ドルの減損に加え、計画変更に伴う部品会社への支払いや手数料など42億ドルが含まれる。GMは25年7〜9月期にEV関連で16億ドルの費用を計上したが、膨らむ可能性に言及していた。
EV事業に加え、24年に発表した中国の上海汽車集団(SAIC)との合弁事業再編に伴い11億ドルの追加費用も発生する。

費用が増えた背景にはEVの急速な需要減がある。温暖化対策に懐疑的なトランプ政権はバイデン前政権が導入したEV購入に対する最大7500ドルの税額控除を廃止し、EV普及の前提となる排ガス規制も緩和した。
25年9月末で税額控除が廃止となり、駆け込み需要の反動減でGMの10〜12月期のEV販売台数は前年同期比で43%減った。
関税やインフレ長期化で米消費者の関心が手頃な価格の車にシフトする中、ガソリン車に比べて割高だったEVには逆風が吹いている。GMは8日「税額控除終了と排ガス規制緩和で北米のEVに対する需要は25年に減速した」と述べた。
ホンダ協業も、誤算続き

GMのEV戦略は誤算が続く。09年の経営破綻以降、オーストラリアや欧州など不採算市場から撤退し、再建後の柱としてEVに300億ドル規模の投資を決めた。
提携もEVを軸に進めてきた。13年にホンダと燃料電池車での提携を発表。両社で3万ドル以下のEVを開発し、世界で投入する狙いだった。しかしコスト競争力の強い中国勢の台頭で競争環境が変化し、23年に共同での量産価格帯のEV開発を中止した。

GMは日本勢やフォードのように北米で需要が広がるハイブリッド車(HV)を持たないことも弱みとなった。24年にHVに強い韓国の現代自動車と提携を発表したが、トランプ政権の関税政策で経営環境が一変し、提携戦略の策定は約1年遅れた。
EV事業は赤字が続き、損失の拡大や関税によるコスト増加も業績の重荷になっている。2025年7〜9月期の純利益は前年同期比57%減の13億2700万ドルだった。
米国の政策転換 再編の目玉に
多額を投じたEV投資の後退は電池など関連産業に影響する。部品メーカーは車大手の電動化方針に合わせて関連投資を増やしてきた。戦略の急速な転換は部品メーカーに重荷だ。結果的に車大手は供給網を支えるコストも増す。
米国のEV需要は減少しているが、世界的なEVシフトは進む。中国勢は電動化に加え人工知能(AI)による自動運転など知能化で先行する。フォードは米国ではEV投資を見直す一方、欧州の小型EV開発で仏ルノーと提携した。先端開発を巡る競争下での生き残りを見据え、米自動車大手の苦境が新たな再編を促す可能性もある。
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