控訴審判決を受け、代理人弁護士や組合関係者と共に記者会見する原告の男性(左から2人目)=東京都千代田区の厚生労働省で2026年1月15日、宇多川はるか撮影

 勤続17年の東京海洋大の男性非常勤講師(62)が、無期転換権が認められず雇い止めされたとして地位確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は15日、男性は「労働契約上の労働者」であるとして無期転換権を認め、男性側の逆転勝訴となった。1審は、男性は労働者に該当しないとして請求を棄却していた。有期契約の非常勤講師を巡る雇い止めは各地で起きており、大学教員の雇用のあり方に影響する可能性がある。

 有期雇用の大学教員の無期転換を巡る訴訟は、各地で起きている。主な争点は二つある。一つは、労働契約上の「労働者」にあたるかだ。もう一つは、通常は有期労働契約が通算5年を超えると申請できる無期転換だが、研究者は特例法で期間が10年超とされている。有期の大学教員が「研究者」に該当するかが問われている。今回の東京海洋大の訴訟の争点は前者だった。

 労働者性を巡っては、大阪大で有期の業務委託契約を続けた非常勤講師4人が無期転換権を求めた訴訟で、大阪地裁は2025年1月、請求を棄却した。原告側は語学などの授業を担当し、実質的には労働者だと主張したが、判決は「契約以外の業務には諾否の自由があることがうかがわれる」と指摘し、労働者と認めなかった。

 労働基準法では原則、雇用契約がある場合に労働者とする。ただ業務委託のため雇用契約を結んでいなくても、労働者として認められる場合がある。

 判断の基準は具体的には、仕事の依頼や指示を受けるかどうかを選べるか▽業務を遂行する上で、発注先からの指揮監督があるか▽勤務場所や勤務時間が拘束されているか▽労働の対価として報酬が支払われているか――などが総合的に考慮される。

 大阪大の非常勤講師の雇用を巡る大阪地裁や東京海洋大の1審判決は、この基準に沿って判断した。「講義内容は自由に決定できた」と指揮監督はなかったとして、労働者と認めなかった。

 一方、今回の控訴審判決は「授業の具体的決定権は常勤教員も同様に有している」などとして、この基準に沿った1審判決を疑問視。その上で、文部科学省が全大学に向けた事務連絡の中で、授業科目を担当している教員を直接雇用しない実態を「不適切」とするなど、繰り返し指導していた点などを重視した内容となった。

 原告代理人の小野山静弁護士は「控訴審判決は、教える立場にある人がどのような労働実態にあるのかを常勤の教員と比較し、実態に即した検討をしている。大阪地裁、東京地裁と非常勤講師の労働者性を否定する流れがあったが、そうした流れを止める意義もある」と話す。【宇多川はるか】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。