世界のスタートアップの資金調達が大型化している。2025年1〜6月(上半期)の資金調達額は2191億ドル(約32兆円)と前年同期に比べ6割増えたことが米調査会社CBインサイツの調べで分かった。調達件数は減少したが、人工知能(AI)分野での大規模な調達がけん引し、1件あたりの平均調達規模は24年通年に比べて1.7倍に膨らんだ。

25年上半期の調達額は資金調達環境が悪化する前の22年の同期間に次ぐ水準となった。調達件数は24%減の1万2640件と上半期として3年連続のマイナスとなった。

1件あたりの平均調達規模は24年通年に比べて71%増の2550万ドルだった。全体の資金調達額が過去最高だった21年通年の平均調達規模(2200万ドル)を16%上回った。

調達規模の大型化の背景にはベンチャーキャピタル(VC)などの投資家がAIや防衛など有望な分野への投資を集中させ、限られたスタートアップが大型調達を実施していることがある。

上半期の調達額上位10件のうち9件が米国のスタートアップによる調達だった。半数以上がAI関連のスタートアップで首位のオープンAIに加えてオープンAI出身者が立ち上げた企業も入った。

オープンAIの共同創業者イリヤ・サツキバー氏が立ち上げたセーフ・スーパーインテリジェンス(SSI)や元最高技術責任者(CTO)ミラ・ムラティ氏が立ち上げたシンキング・マシンズ・ラボが並んだ。

宇宙や防衛分野にも注目が集まっている。成層圏探査技術の開発を手掛ける米ワールドビューや防衛システムを手掛ける米アンドゥリルが上位に入った。

地域別では米国の調達額が前年同期比2倍の1616億ドル、件数は20%減の5072件だった。段階ごとの調達比率では初期段階であるアーリーステージの比率が低下し、ミドルやレイターといった事業拡大期の企業の調達比率が上昇した。

欧州の調達額は1%増の284億ドル、件数は24%減の3186件。日本の調達額は12%減の15億ドル、件数は3%増の718件だった。

事業拡大に多額の資金を要するAIや宇宙といったディープテック(先端技術)領域などで世界的に調達額が大型化しているが、日本の調達額上位は資金需要が比較的小さいエンターテインメント関連が多く、全体の調達額は減少した。

上半期は企業価値が10億ドル以上の未上場企業「ユニコーン」が世界で新規に55社誕生した。前年同期比4割増え、6月末時点の合計のユニコーン数は1285社となった。

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