
NTTドコモが苦境にある。5日、2026年3月期の純利益(国際会計基準)が前期比15%減の6120億円になりそうだと発表した。減益は2期連続になる。高速通信規格「5G」関連などの設備投資が重い。シェア争いが激しく販促費の増加も負担となる。携帯通信の収益力低下がNTTグループ全体の足かせとなる構図が強まっている。
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「激しい競争環境が続いており、販促費が想定を上回った」。ドコモの前田義晃社長は決算の記者会見において下方修正の理由を説明した。
携帯通信サービスを巡るKDDIやソフトバンクなどとのシェア争いは激しさを増している。回線やスマートフォンなどの販促強化のための費用は25年4〜12月期に前年同期比70%増となる646億円に膨らんだ。本業の個人向けモバイル通信サービスに当たる「コンシューマ通信」事業の営業利益を同31%減の2902億円に押し下げる要因となった。
親会社のNTTが5日発表した26年3月期の連結純利益は下方修正して一転減益となる見通しだ。ドコモの携帯通信の不振が響く。

最大の課題は通信品質の悪化とそれに伴う顧客の流出だ。
ドコモを利用する横浜市の20代男性は「山手線や京浜急行などの主要なターミナル駅に近づくとネット全般がつながらなくなる。動画が見られないだけでなくSNS更新すら厳しい」と不満げに話す。
5G整備、競合の半分程度
ドコモは23年ごろから繁華街や主要駅を中心にデータ通信速度が低下する状況が続く。特に5G整備の遅れは際立つ。ドコモの5G基地局数が25年3月末時点で5万2532局だったのに対して、KDDIは11万37局、ソフトバンクは10万4441局とそれぞれ倍の規模に達する。
KDDIは5Gの全国展開を見据え、早期から基地局整備に積極投資を進めた。ソフトバンクも都市部を中心に5Gの品質改善を進め、利用者のサービス満足度を底上げしている。楽天モバイルは収益面では課題を抱えつつも自社回線エリアの拡大に注力し、5Gを使えることを前面に出す。

この状況を招いた背景には設備投資を抑制してきた経営判断がある。動画視聴などでデータ通信量が急増した5G普及期においても投資効率を重視し基地局整備を抑えた結果、通信品質で競争力をそがれた。
3月末には「3G」サービスの終了を控えており、既存顧客への移行対応が本格化する。ドコモは25年9月末時点で33.3%のシェアがあるが、通信品質への不満が解消されなければ競合他社への流出が加速しさらなるシェア低下は避けられない情勢だ。
ドコモは基地局増設を急ぐ。25年度上期末時点の5G基地局数は23年度末比で約1.3倍に増えたという。さらに26年度を通じて25年度上期と比べて基地局の建設数を3倍にする計画も掲げる。前田氏は5日、「26年度中には(通信品質で)他社を超えられるだろう」と見通しを語った。
MM総研の横田英明副所長はドコモの通信品質について、「何としても他社に負けてはならないところ。ただ、失った評価を上げるのには時間がかかる」と指摘する。

ドコモは本業である通信の成長が停滞する中、金融や決済、エンターテインメントなどを成長ドライバーに位置付けてきた。25年10月には約4200億円を投じて住信SBIネット銀行を完全子会社化し悲願の銀行業に参入した。5日には親会社のNTTの島田明社長が、7月をめどに銀行を含めグループのマネックス証券、融資のドコモ・ファイナンスなどを傘下に金融業をまとめた持ち株会社をつくる構想も明らかにした。

スポーツ配信サービス「DAZN(ダゾーン)」の見放題を目玉に据えて、25年6月に始めた料金プラン「ドコモMAX」は1日時点で250万契約を突破した。同年11月には衛星放送のWOWOWと業務提携するなど、コンテンツ分野を軸に通信契約者増を狙う戦略に力を入れる。

NTTドコモは個人向けのモバイル通信サービスを手掛けると同時に、傘下に法人向けICT(情報通信技術)サービスを提供するNTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)などを抱える。22年3月期ではグループ全体の営業利益の約6割を占めていたコンシューマ通信だが、26年3月期は3割ほどになる見通しだ。

ドコモが自社で保有する「NTTドコモ代々木ビル(東京・渋谷、通称ドコモタワー)」を含むオフィスビル4棟の土地売却など経営の効率化はすでに検討が進んでいるという。さらなる効率化と通信品質改善、非通信分野の拡大を同時にすすめる難易度の高い戦いだ。
「(顧客獲得)競争は一段と激しさを増している。この戦いに勝たなければならない」とNTTの島田氏は力を込めた。反転の道筋が付けられなければ、非通信を含めた総合サービス企業への転換は絵に描いた餅に終わる。
(田中瑠莉佳)
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