米モーティブはAIを車載テレマティクスの基盤に据えて危険予測や運転者の自動コーチングなどの機能を実現している=同社サイトより
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

AIを土台に活用して学習、適応、改良を続けるAIDVは、車のプラットフォーム設計の次の進化だ。

だが、AIDVに必要な接続性を提供する「ソフト定義車両(SDV)」インフラを搭載している車は、世界の新車販売全体の4%にとどまる。

米エヌビディアや米クアルコムのようなテック大手はこのシフトの原動力となるAI計算とソフトを開発し、独ボッシュやデンソーなどの既存勢は製品をAIに対応させている。米テスラや中国の小米(シャオミ)のような垂直統合型の車載AIのリーダーは、主要機能を社内で開発している。

最終的には車載OSやセンシングシステム、サイバーセキュリティーなどの重要技術を制した企業が商業的成功を収めるだろう。自動車メーカーは車載OSを独自開発するか、外部の技術パートナーへの依存に甘んじるかの岐路に立っている。

今回の市場マップには、次世代のコネクテッドカーを支える96社を掲載した。未上場企業は2010年以降に創業し、モザイクスコア(未上場企業の健全性と成功の可能性を示すCBインサイツの独自スコア)が500点超(成功の可能性が高いことを示す)の企業を対象にした。上場企業は戦略的提携、投資活動、M&A(合併・買収)件数に基づいて選んだ。

コネクテッドカー技術の市場マップ。出所:CBインサイツ

注:このマップは大手企業と、2010年以降に創業したモザイクスコア500点超の未上場企業を対象にしている。対象企業が20社を超えるカテゴリーは、スコアの高いスタートアップと一部大手を掲載した。企業は複数の市場に重複して登場する場合がある。マップはこの分野を網羅してはいない。

AIDVを見据えたプラットフォーム競争

SDVの開発競争はAIDVで最大の価値を得る企業を方向付けるだろう。SDVプラットフォームはAIDVの土台となる通信インフラを提供するからだ。ただし、AIDVが広く商用化されるのは数十年先になるとみられる。

「SDVプラットフォーム」カテゴリーは強力な商業的な勢いを示している。このカテゴリーの企業の平均モザイクスコアは695点とCBインサイツの1600以上のカテゴリーの上位9%に位置し、自動車業界の65余りのカテゴリーのトップに立つ。SDVプラットフォームは将来有望なだけでなく、車載の通信機能から走行データを取得する「テレマティクス」や運転者のモニタリングなどの分野で既にAIアプリケーションを実用化している。

米モーティブ(Motive)と米ネトラダイン(Netradyne)(ともにモザイクスコアは未上場企業全体の上位1%)はAIを車載テレマティクスの基盤に据え、危険予測や運転者の自動コーチングなどの機能を実現している。モーティブは2025年の売上高が前年比35%増の5億ドル、ネトラダインは81%増の2億1000万ドルに上り、AIスマートカーの商業的な可能性を実証している。

SDVやAIDVの増加に伴い、サイバーセキュリティーとデータプライバシーの懸念はますます重要になる。24年には欧州連合(EU)でのサイバーセキュリティーの法規制の施行に伴い、独メルセデス・ベンツ、独ポルシェ、独フォルクスワーゲン(VW)は対応できない車種の販売終了を余儀なくされた。

このため、自動車メーカーはサイバーセキュリティー企業との提携を優先している。イスラエルのアップストリーム(Upstream、モザイクスコア730点、未上場企業全体の上位3%)は26年1月、チェコの自動車メーカー、シュコダと提携し、シュコダのコネクテッドカーにセキュリティー監視機能を搭載した。

ソフトウエアスタック、AI計算インフラ、スマートカーシステムを支配できるかどうかが、商業的な勝者とコモディティー(汎用品)化した車両プロバイダーとを分けるだろう。基盤プラットフォームとそれに基づくアプリケーションを支配する企業がAIDVをリードする絶好の位置に付ける。

市場の概要:

SDVプラットフォーム:車の機能を固定化されたハードウエアから、ソフトウエアで制御され、無線通信でアップデート可能なアーキテクチャーに移行させるプラットフォーム

車載マーケティング&広告プラットフォーム:車内の画面やインフォテインメントシステムを通じて、ターゲットを絞り、状況や背景に対応した広告を配信するプラットフォーム

コネクテッドカーのデータプラットフォーム:保険、商用車の運行最適化、モビリティーサービス向けにリアルタイムの車両データを集約・標準化するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)ファーストなシステム

V2X(Vehicle to everything、ビークル・トゥ・エブリシング)技術:衝突回避やスマート交通を実現させるため、車両、インフラ、歩行者の間で低遅延データをやり取りできるようにするソリューション

運転者モニタリングシステム:運転者の眠気や注意散漫、危険な行為を検知し、リアルタイムで警告や指導をするソリューション

自動車サイバーセキュリティー&データプライバシーソリューション:プライバシー規制を守りながら、コネクテッドカーと車両データをサイバー攻撃の脅威から守るソリューション

フリート映像テレマティクス基盤:商用車の訓練、事故の検知、保険金請求の管理向けに走行時の映像を撮影・分析する通信機能付きカメラシステム

車載インフォテインメントソフト:デジタルコックピットの車載マルチメディア、ナビゲーション、音声アシスタント、アプリを動かすソフトウエア

ロケーション・インテリジェンス&マッププラットフォーム:地理空間分析や位置ベースのアプリケーション向けに、地図API、地理情報システム(GIS)ツール、位置データセットを提供するプラットフォーム

車両ネットワーク機器:テレマティクス・ユニット、車載ゲートウェイ、スイッチ、V2Xモジュールを通じて車内やインフラへの接続を可能にするハードウエア

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