エネルギー関連産業が集積する響灘地区の海上には「北九州響灘洋上ウインドファーム」の風車が立ち並ぶ(北九州市若松区)

Jパワーや九州電力子会社の九電みらいエナジー(福岡市)が出資した北九州市の洋上風力発電所「北九州響灘洋上ウインドファーム」が2日、運転を開始した。稼働時点では国内最大の洋上風力発電所で、国内洋上風力の総出力の4割を担うことになる。

同ウインドファームの事業公募者である北九州市の武内和久市長は「産業と環境を両立させ、日本のエネルギーの自立につながる歴史的な一歩となった。東アジアの洋上風力の市場拡大をにらんで総合拠点化も目指す」と語った。2026年度当初予算案で洋上風力のサプライチェーン(供給網)構築に総額3億700万円を計上している。

ウインドファームの風車は25基。1基あたりの発電出力は9600キロワットで、合計の最大出力は22万キロワットに上る。年間発電量は約5億キロワット時の想定で、北九州市の世帯数の4割となる一般家庭約17万世帯分の電力をまかなえる計算だ。

運転や管理はひびきウインドエナジー(北九州市)が担う。同社にはJパワーが4割、九電みらいエナジーが3割、風力発電保守の北拓(北海道旭川市)と西部ガス、クラフティア(旧九電工)が1割ずつ出資している。

風力発電所は出資比率を公表していない場合も多く、企業ごとの保有出力を明確に算出できないが、九電グループは同施設の稼働で8.8万キロワットを取得し、国内トップクラスの洋上風力事業者になったとみられる。

洋上風力を巡っては、三菱商事と中部電力が千葉県沖や秋田県沖の3海域で進めていた発電計画からの撤退を発表。固定価格買い取り制度(FIT)を基に安値で落札したが、世界的な資材費・労務費の高騰などを受け頓挫するなど、収益見通しが立てにくい環境だ。

ひびきウインドエナジーは当初の投資額1700億円に資材高騰を織り込み済みだった。資材高に対しては、基礎に使用する鋼材の量を全ての風車で一律にするのではなく、設置地点の状況に応じて板の厚みを調整して全体の鋼材量を削減するなど、設計による合理化に取り組んだ。

設計や施工では、日本特有の地震・津波などを踏まえた構造設計や日本の海域に多い複雑な海底地盤に基礎を固定する技術も蓄積した。

みらいエナジーは建設や設計のほか、港湾区域内での設置・運転に関する漁協など地元事業者との交渉や、大規模洋上風力に関するプロジェクトファイナンス(事業融資)などの知見も今後に生かせるとみる。

政府の第7次エネルギー基本計画では40年度に発電電力量に占める風力の割合を現在の1.1%から4〜8%に高めるとしており、洋上風力の拡大が欠かせない。

今回の施設は風車の土台を海底に固定する「着床式」だが、今後は沖合で土台を海に浮かべる浮体式の拡大も見込まれる。

北九州市は響灘地区で浮体式の総合拠点整備を目指している。みらいエナジーは浮体式の設置地域を調査する風況観測技術の研究を進めており、響灘で得られる知見も合わせて洋上風力の需要取り込みを目指す。

(大淵将一)

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