
日本化学工業協会(日化協、東京・中央)の岩田圭一会長(住友化学会長)は19日、中東情勢を踏まえ「原料調達の多様化や、製品ごとに在庫が異なるなかで供給網をどう維持することが重要だ」と話した。ホルムズ海峡の事実上の封鎖などにより、基礎化学品の原料となるナフサ(粗製ガソリン)の調達が困難になっている。
同協会は基礎化学品のエチレン生産設備を持つ企業や中間材料を手がける企業のほか、それらの化学品をもとに塗料、洗剤などの日用品、医薬品などを製造する企業が参画している。
ナフサの調達難が長期化した場合、安全性などの観点から特定の仕様の樹脂などを使い代替がききにくい製品から供給が細る可能性がある。
政府はナフサとして2カ月、樹脂など製品で2カ月と全体で4カ月の在庫があるとするが、岩田会長は「用途ごと、同じ製品でもグレードごとに在庫には差がある。顧客と丁寧にコミュニケーションをし供給網を守っていくことが我々がやるべきことだ」と話した。
ナフサは国内需要の4割超を中東に依存しており、岩田会長は国内産含めナフサの調達の多様化にも官民一体で取り組んでいるとした。ただ、需給が逼迫する中で中東以外から調達すると高価な原料にならざるをえない。足元でもメーカーによる樹脂などの値上げが出始めているが「価格転嫁は浸透していくだろう」(岩田会長)とみる。
16日には原油の民間備蓄の放出が始まり、今後国家備蓄も放出が見込まれる。原油精製によって得られる成分のうちナフサは約1割にとどまり、十分な量を長期的に確保することは難しい。
ただ最も川上の原油で国家備蓄が約250日分あることについて、岩田会長は「ここまで手厚く持っているところはないだろう。非常に大きなアドバンテージだ」と述べた。
石油化学製品は食品包装材、家電や自動車、医療現場で使われる輸液パックなど、身の回りの多くの製品で使われている。原油精製の過程で得られるナフサを熱分解し、基礎化学品のエチレンやプロピレンなどを生成する。さらに化学反応や加工を経て樹脂など様々な中間材料となり、多くの最終製品の原料となるなど供給網は長大だ。
エチレン生産設備を運営する各社は原料調達難を見据え、稼働率を下げて運転している。国内12基のうち少なくとも6基は減産中で、定期修理中の設備も再稼働の時期を遅らせている。
基礎化学品の減産は、樹脂などの生産状況や価格変動に直結する。信越化学工業はエチレンを原料とし建築資材などに使われる塩化ビニール樹脂の値上げを決め、原料の供給減を受けた減産も始めた。三菱ケミカルグループも食品包装材などに使われる樹脂など複数の製品を値上げすると発表している。
日化協によると、基礎化学品や洗剤や医薬品などの最終製品を含めた化学工業と、プラスチックやゴム製品を合わせた化学分野全体の出荷額は2023年時点で50兆円を超える。製造業の中では自動車などが含まれる輸送用機器に次いで2番目に大きく、全体の14%を占める。
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