日本の納豆輸出が近年、大きく伸びている。
量・額ともに2025年に過去最高を記録し、一部メーカーは売り上げが「9年前の500万円から3億円超に伸びた」ほどだ。
外国人の多くが「ネバネバした見た目とにおいが無理」と顔をしかめていた時代も今は昔。追い風になったのは、日本食ブームだけではないという。
財務省の貿易統計によると、25年の輸出量は前年比44%増の5248トン。統計を取り始めた17年の1752トンから右肩上がりに上昇している。
輸出額は9億6000万円(17年)から、約3倍の32億1000万円(25年)に。最大の輸出先は全体の3割近くを占める中国で、米国、タイ、香港、台湾、韓国と続いた。
グラミー賞歌手も一役
背景に何があるのか。
「和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたのが契機では」と指摘するのは、北海道農政事務所の東川博夫・輸出対策推進官だ。
「しょうゆや抹茶と同じように、日本食材を使う外食産業が海外で増える中、新型コロナウイルス禍で世界的な健康志向も高まり、複合的な作用が生まれた」とみる。
ちょうどパンデミック(疫病の世界的大流行)が始まった20年、世界4大医学誌の一つ「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)」で、納豆が死亡リスクを低下させる食材として紹介されたことも追い風となった。
通常、輸出する納豆は冷凍輸送されるが、納豆菌は休眠状態となるため、発酵食品としての栄養素は損なわれないという。
日本貿易振興機構(JETRO)によると、日本人駐在員のために明治時代から輸出されていたとみられる納豆の海外需要が急激に伸びているのは、「インフルエンサーの存在が大きい」という。
動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で「natto」と検索すると、さまざまな国籍のユーザーが納豆パック内をぐるぐるかき混ぜ、口に運ぶ様子の動画が出てくる。
「私も食べてみた」「あなたも好き?」。英語、インドネシア語、韓国語、ポルトガル語などさまざまな言語で投稿文が添えられ、数十万回再生されている動画も珍しくない。
中でも大きなインパクトを残したのが、グラミー賞を受賞した米歌手のリゾだ。
2600万人以上のフォロワーを従えるリゾは自身のアカウントで23年、からしとタレを加えた納豆を白米に乗せ、うれしそうにほおばる姿を度々公開してきた。
動画は「何この食べ物」「フィルムの外し方が手慣れてる」などと、インターネット上で話題になった。
汁物に、ハチミツと…食べ方多彩
全国納豆協同組合連合会によると、インバウンドの存在も納豆ブームに一役買っている。日本旅行中に宿泊先の朝食で納豆のおいしさを知り、帰国後も買い求める潮流があるという。
同連合会は、ここ数年で輸出額が急伸しているタイのインフルエンサーから「納豆の健康効果について知りたい」と取材を受けたこともある。
長谷川健太郎会長は「東洋の国の不思議な食べ物がこれだけ受け入れられているのは不思議だ」と話す。
長谷川会長によると海外での食べ方はさまざまで、アジアでは煮込み料理や汁物にも入れられる。
北米ではハチミツをかける食べ方があり、カナダ出身の落語家、桂三輝(さんしゃいん)さんはメープルシロップを薦めているという。
大豆生産量が全国1位の北海道で納豆を生産している「北海道はまなす食品」(江別市)は、17年に輸出を始め、中国、米国、スイス、ドイツ、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアなど16の国・地域に販路を広げてきた。
海外向け売り上げは500万円から60倍の約3億円に伸長。秘訣(ひけつ)は、業者に頼らず自前で輸出できるノウハウを身につけたことと、各国の法令にきめ細やかに対応していることという。
萩原由希子営業部長は「世界情勢のリスクや輸出の手間を考えると決して楽な商売ではないが、まだまだポテンシャルがある商材。納豆という日本の食文化を世界に広める一端を担い、みんなで健康になった結果が、イコール売り上げになればうれしい」と話している。【伊藤遥】
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