
栃木県芳賀町で、次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)」の延伸計画が浮上している。町の西側を走っている既存のLRTを分岐させ、中心部まで延ばすという案だ。3月末に廃止されたバスの代替手段とするとともに、町の活性化の起爆剤としたい考えだ。
芳賀町は宇都宮市中心部から約20キロメートル東に離れた場所に位置する。同町には芳賀と芳賀・高根沢の2大工業団地があり、ホンダをはじめ約100社が拠点を置く。工業団地付近にあるLRTの停留場と、その東に位置する中心部を結ぶバス路線が廃止されたことで、地域住民の移動に影響が出ている。

宇都宮LRT開業前は、宇都宮市から芳賀町の工業団地に車などで通勤する人が多く、慢性的な渋滞が長年課題となっていた。2023年8月にJR宇都宮駅東口と芳賀・高根沢工業団地を結ぶLRTが開業すると、道路交通量の削減や渋滞の緩和につながった。
LRTはJR宇都宮駅から東側に延びている。芳賀町内の停留場「芳賀町工業団地管理センター前」で北に曲がり、終点の芳賀・高根沢工業団地につながる。町内最大の人口集積地「祖母井市街地」は同停留場からさらに約5キロメートル東に離れた場所にあり、LRTは通っていない。中心部に住む3000人はLRTの恩恵を直接的には受けていない。

芳賀町は24年に、35年度までの町の指針を示した第7次芳賀町振興計画を策定。LRTの中心部への延伸を重点項目と位置付けた。27年度をめどに有識者を含めた検討会を設置し、需要や費用対効果などを検証するほか、延伸ルートを決める。芳賀町工業団地管理センター前と中心部を直線で結ぶ栃木県道69号線を通る形を想定している。
芳賀町工業団地管理センター前付近には、駐車場や駐輪場、バス停などが集まるトランジットセンターが整備されている。芳賀町の住民は中心部からバスなどでトランジットセンターに向かい、LRTに乗り換えて宇都宮市内に向かうのが一般的だった。
ところが、中心部とトランジットセンターを結んでいたバス路線は廃止された。運行会社のジェイアールバス関東が利用者数の減少を受け、宇都宮支店管内で運行する全路線の廃止を決めたためだ。

当面の間は芳賀町が運行するデマンドタクシーをバスの代替手段とする。ただ、デマンドタクシーは元々福祉目的につくられた「応急措置」に過ぎず、恒常的な移動の手段にはならない。
芳賀町の大関一雄町長は、バス路線の赤字を同町が補塡し、「補塡額は一時、年間で最大6000万円にのぼった」と明かす。同町中心部へのLRTの延伸は悲願としながらも、課題も多いと指摘する。

目下進行中のLRTのJR宇都宮駅西側延伸の実現時期は、30年から36年に先送りとなった。そのため、芳賀町での延伸が実現するのは西側延伸の完了後となる見込みだ。その間に資材高騰や人口減少が進み、総工費が現時点の試算をはるかに上回ることや、そもそも延伸の需要が無くなることを危惧する。
大関町長は芳賀町のLRT延伸が実現するまでの間、「人口増につながる工業団地や住宅地の増設を加速させ、将来的な需要を呼び起こす」と語る。芳賀町には高校がないため、高校生は自転車などで町外に通っている点も指摘。延伸が実現すれば「進学先の選択肢も広がり、地域にプラスの効果が生まれる」と強調する。
(三好博文)
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