
京都府舞鶴市引土の老舗米穀店「まつもと米穀」が2日午前10時、営業を再開する。創業90年で同市内で最大の米穀店だったが、「令和の米騒動」で必要量の米の仕入れができなくなり、3月下旬に閉店していた。新米確保を巡る争奪戦は今も各地で続き、3代目社長の松本泰さん(52)は仕入れ先確保に走り回って、ようやく安定供給ができる態勢が整った。
「米屋ですが 米ありません 良質な米が安定供給できるまで店を閉めます ごめんなさい」――。店の正面のシャッターには大きな張り紙(縦1・4メートル、横3・2メートル)が3月24日の閉店日から張り出されているが、再開と同時にはがす予定。
店は1935年創業。閉店に追い込まれたのは初めてだった。精米工場を独自に持ち、従業員は15人。年間約300トンの米を扱ってきた。米価格が高騰した24年秋から仕入れが困難となった。
閉店に伴い、米の仕入れや販売に関わる従業員6人のうち5人を解雇し、1人をおにぎり部門に移ってもらう苦渋の決断をせざるを得なかった。
閉店が報道されると、全国から同業者を含む励ましの声が次々と寄せられ、多くの農家や卸売り業者が協力を申し出てくれた。松本さんは良質の米の安定仕入れに向けて東北地方を回り、新たな大口の取引を成立させた。

こうした努力が実り、解雇した5人のうち4人を再び雇用できた。店舗の営業再開に先立ち、インターネット販売は既に再開。出産祝いのお返し用に、赤ちゃんの体重と同じ重さの米を贈るもので、再び人気商品とすることを目指している。
松本さんによると、新米確保を巡っては「すさまじい争奪戦が続いている」という。仕入れ値は例年比で5割増しの高値が続く。そうした中で、個人的なつながりで新たに仕入れ先ができたという。
営業再開で最も力を入れているのが「米の価値の再発見」。お米のおいしさを味わってもらおうと、良質な米の提供に力を注ぐとともに、店内にカフェ「お米カフェ勘兵衛」を開店。米粉で作ったスイーツを味わえる。営業再開に合わせ、先着200組に新米のコシヒカリ2合をプレゼントし、おにぎりも販売。さらに、近くランチも提供する予定だ。
全国からの励ましが大きな力となり、何よりも「人の優しさ」が身にしみたという松本さん。「米は日本人の文化そのもの。これまで米の値段は安いのが当たり前で、生産者がないがしろにされてきた。令和の米騒動でさまざまな問題が浮かび上がったが、米屋としてもっと米の価値を多面的に伝え、消費者と生産者をつなぐかけ橋になりたい」と話した。【塩田敏夫】
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