東洋紡が手掛けるガラスクロス=同社提供

日東紡は先端ロジック半導体のパッケージ基板に使う特殊ガラス素材の生産能力を現在の最大3倍に増強すると発表した。福島事業センター(福島市)に150億円を投じて新工場棟を建て、2027年の稼働を目指す。生成AI(人工知能)技術の普及に伴いAIサーバー市場が拡大し、同社の特殊ガラスの需要も急伸していることに対応する。

新工場棟で製造するのはガラス糸で織られたガラスクロスのうち、熱膨張や反りに強い「Tガラスクロス」。複数のチップを高密度に接続する最先端AIサーバー用半導体のパッケージ基板に採用されている。

近年では生成AI関連のデータセンター(DC)向け半導体の需要拡大に伴い同素材の引き合いが強まっていた。新棟の生産能力をすべてTガラスクロスの増強にあてた場合、最大で3倍程度の生産が可能になるという。

新棟は地上2階建てで延べ床面積は約1万7000平方メートル。26年12月の竣工を予定し、27年1〜3月の稼働開始を目指す。同社は24年度から4年間の中期経営計画で累計800億円の設備投資を掲げ、これまでの2年間で大半の案件の意思決定を済ませたという。追加の設備投資にも柔軟に対応する方針。

今回の設備投資では福島県の企業立地促進補助金を活用する。国からも経済安全保障を推進する制度「供給確保計画」の認定をうけ、最大24億円の助成を受ける予定だ。

日東紡は1938年に世界で初めてグラスファイバー(ガラス繊維)を開発した素材メーカー。生成AI関連のDC需要の拡大を背景に、25年3月期の連結純利益は前の期比76%増の128億円と過去最高となった。26年3月期も過去最高益の更新を見込んでいる。

日東紡がガラスクロス増産に向けて増設する新工場棟のイメージ=同社提供

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