

傘下の雑貨店「3COINS」が急成長しているアパレル大手のパルグループホールディングス。同社の松尾勇会長兼CEOに「3COINS」の誕生の経緯や強みについて話を聞いた。
――自由な気風によって社員の力が引き出されているように見えます。
「創業者の井上(英隆氏)が人を生かすことを重視して事業展開してきました。人を生かすことは、創業以来、社内で意識されてきたことです」
「うちは上場会社になりましたが、個人商店みたいなもんです。『自分で商売をやりたい』という意欲のある者が入社してくれたことで、事業規模が大きくなりました」
「我々の事業は服から入ってますので、メインはアパレルです。雑貨も売上高の3分の1ぐらいになってきましたが、残りはアパレルです。今後も時代と消費者が望むものに関しては、いろんな業種を積極的にやっていきたい」
――社内でも良い意味での競争があるようですね。
「社内競争が激しく(各ブランドが)ライバルとして、同業他社のように競い合ってきました。それが全体のレベルを上げている部分があります」
「うちは『べた平等』じゃなく、成績の良い人にはそれなりの配当を出す。それが本当の平等だと考えています。これはもう昔からやってきてるんですね。業績の良いブランドは、業界トップレベルの賞与を支給しています」
――事業の強みはなんですか。
「うちの特色は、1カ月単位の短いサイクルで在庫を積まずに商品を売り切る『4週間MD』です。素早くタイムリーに商品を作って消費者に届けるので、店頭に絶えず新鮮な商品がある。鮮度が落ちると売り上げも落ちるんです」
「市場に例えたら、うちは『乾物屋』じゃなくて、『魚屋』でないとあかん。仕入れた魚はその日に売る。そうでないと腐ってきますからね。早く見切って全て売ってしまいます」
――1994年に3COINSの1号店を開業しました。
「バブル崩壊後の三十数年前、創業者から『時代が変わる。低価格でファッション性のあるリーズナブルな業態を開発しなさい』というお題目をもらいました。そこで、私と部下2人で色々考えて立ち上げたのが3COINSです」
「我々はファッション屋なので、おしゃれな部分を出したかった。仕入れも考えると商品の価格は300円が限界だと考えました。商社さんとの出合いもあり、出物をうまく買えた。普通は3000〜5000円する商品を300円で販売し、爆発的に売れました」
――今後は何に注力しますか。
「当社は若い女性向けのトレンドの商品が集まっているブランドが多い。顧客層が狭いので出店できるところにも限界があります」
「中長期的にはいろんな方に買っていただけるブランドを積極的につくっていきたい。北海道から沖縄まで、全てのモールに出店できるようなブランドになれば500億円くらいまで規模が大きくなります」
――3COINSは7月、香港1号店を開業しました。海外再進出となります。
「3COINSは当社の中で年商が別格に大きいブランドです。おしゃれな雑貨というジャンルで形をつくれています。ただ国内だけでは限界がありますから海外事業も考えていく必要があります」
「海外展開は(国内小売業界の)諸先輩が取り組んできましたが、なかなかうまくいっていません。現地の消費者の方がどんな反応を示されるか。ふたを開けてみないと見えない部分があります」
――2024年には創業者の井上氏が会長を退任しました。
「私は井上と半世紀にわたり一緒にやってきました。事業会社パルの小路順一社長やパルGHDの児島宏文社長も新卒でうちに入ってますから、(人を生かす)『井上イズム』がこびりついています。根幹の部分は井上イズムから一切逸脱しません」
(日経ビジネス 梅国典)
[日経ビジネス電子版 2025年7月23日の記事を再構成]
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