厚生労働省の専門部会は4日、医療機関が看板や広告で掲げることができる診療科名に「睡眠障害」を加える議論を始めた。実現すれば2008年に規制緩和して以来、初めての追加となる。世界的に睡眠時間が短い日本人が適切な医療にアクセスしやすくなる可能性がある。

内科や精神科などと組み合わせ「睡眠障害内科」などと掲げることを想定する。日本睡眠学会が4月に要望していた。既に関係学会の賛同を得ており、認められる公算が大きい。

医療機関が看板や広告で掲げる診療科名は標榜診療科と呼ばれる。患者を守る観点から医療法が規制し、掲げられる診療科名を政省令で定めている。

08年4月に政省令が見直され、対象が拡大した。内科、外科、小児科、精神科など単独で使えるものがおよそ20種類あり、ほかに整形外科や緩和ケア内科など組み合わせが可能な用語がある。医師1人に対して「主たる診療科名を原則2つ以内」といったルールがある。

睡眠障害を追加する議論は医道審議会の診療科名標榜部会が担う。部会の開催は08年2月以来、17年ぶりだ。

学会は「睡眠医療体制の最大の課題は、どこを受診してよいかわかりにくいことだ」と訴えていた。不眠症や睡眠時無呼吸症候群の治療は精神科や呼吸器内科などが手掛け、患者はどの診療科を受診したらよいか迷いやすい。

4日の部会では、厚労省が26年3月ごろまでにあと2回部会を開いて議論を取りまとめる日程を示した。パブリックコメント(意見公募)を経て施行する。

日本は世界でも睡眠時間が短い「寝不足大国」とされる。経済協力開発機構(OECD)の21年の集計では、日本の平均睡眠時間は7時間20分ほどだった。対象となった約30カ国の中で最も短く、全体の平均に比べて1時間ほど少ない。

日本睡眠学会が23年11月に20〜70代の約3600人に実施したネット調査では、6割が眠りに課題を感じ、全体の1割弱が医師に相談していた。睡眠障害は労働生産性を低下させ、産業事故などの誘因にもなるとされる。

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