
カプコンが大阪・関西万博に出展する「モンスターハンターブリッジ」が人気だ。事前予約では満員が続き、1日3回開放される当日予約枠もすぐに埋まってしまう。シリーズ累計1億本以上を売り上げたゲームをリアルの世界でどのように表現したのか。開発者に見どころを聞いた。
モンハンの世界に迷い込んだかのような…
万博会場東側にある大阪ヘルスケアパビリオン。その敷地内の一角にモンハンブリッジを体験できるXDホールが置かれている。ホール横の建物には壁いっぱいにモンスターの壁画が描かれ、ホールまでの通路にはモンスターの足跡が残る。ホール正面に置かれた「リオレウス」などモンスター3体がモチーフになった大型モニュメントは迫力満点だ。
円筒形のホールの大きさは床面が直径約12メートル、高さ約5メートル。天井と側面が全てLEDディスプレーで囲まれ、周囲に設置されたスピーカーからの立体的な音響が参加者を包む。
ホール内で参加者はAR(拡張現実)デバイスを頭部に着用。ARデバイスは参加者の体の向きや手の動きを認識し、ディスプレーの映像と連動してさまざまな映像を映し出す。
約11分間のコンテンツの内容は圧巻だ。最初の場面は、モンスターが平和に暮らす緑豊かな草原。その後、火山や嵐の海へと舞台が移り、リオレウスやラージャン、ラギアクルスといったシリーズおなじみのモンスターが登場。モンスター同士の戦いを見たり、ARデバイスを通じてモンスターに石を投げたりして、自分がモンスターハンターの世界に迷い込んだかのような臨場感あふれる体験ができる。コンテンツの最後にはサプライズの演出もある。
「ゲームと直接触れ合える」体験

「モニターやコントローラーのないゲームはどうなるのか興味があった」。今回の開発の責任者を務めた藤岡要ディレクターは開発のコンセプトについてこう語る。藤岡さんの元に万博出展の話が持ちかけられたのは2022年夏ごろ。「未来社会の実験場」をテーマにした万博で新しい体験をどのように生み出せばよいのか。その答えが「ゲームと直接触れ合える」体験だった。
重きを置いたのがゲームの世界への没入感だ。360度のディスプレーや立体音響、床振動といった設備面へのこだわりはその一環だ。「遊んでいる人の感情が動かせるほど、ゲームの没入感を大事にしたい」と語る。
ただ、企画の段階ではどのような設備を採用するのかは白紙状態。ディスプレーなど種類が多い中で、最適な選択肢を選ぶ必要があった。さらに開発した内容が画面に表示されるゲームソフトの開発と違い、建物が完成しなければ実際のコンテンツの見え方や聞こえ方、感じ方が分からない。「完成形が分からないのに完成を目指している感覚だった」と振り返る。
XDホールの建屋完成は24年12月ごろ。設計通り映像や音響設備を入れても、違和感なく利用者が体験できるようになるには微調整が必要になる。開幕までの約4カ月間、開発チームのメンバーが毎日のように会場を訪れ、展開に応じた音の聞こえ方や映像の映し方、床振動のムラなどを調整していった。
先端技術でこれまでにない没入感
「モンスターハンターの世界に引き込みたかった」と体験するコンテンツの内容にもこだわる。例えば最初にモンスターが生活する様子が登場する草原の空間は、映像を投影しているだけではなく、リアルタイムで参加者の動きに連動。参加者が手を振るとモンスターも反応し、何もしないとスルーするなど「最初からゲームになっている」という。
カプコンらしい「隠し要素」もある。ARデバイスに映し出される誘導役のネコのようなキャラクター「アイルー」は参加者の動きに合わせてデバイス内で反応をしてくれるが、「会場では体験しきれないくらい」動きが詰め込まれているという。参加者の手の動きに合わせて手を振り返したり、ハイタッチしたりするだけでなく、一緒に踊ったり、アイルーが寝たりといった動作もある。今年に入ってから追加した要素もあるという。
人工知能(AI)やARデバイスなど先端技術が盛り込まれ、これまでにない没入感を実現したモンスターハンターブリッジ。藤岡さんは「自分たちが持っているデジタルエンターテインメントを全て出した。いろんなことが詰まっているので注意深く見てほしい」と話す。【妹尾直道】
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