
トランプ米政権が8月下旬に小口の輸入品にも関税をかけ始めたことで、米国向けの国際郵便サービスが混乱している。小口郵便の免税措置を利用して急成長した「SHEIN(シーイン)」や「Temu(テム)」など中国系通販業者の商品への課税を強化する狙いがあったが、新ルールの詳細が十分に周知されず、日本郵便を含めてサービスを一時停止する郵便事業者が続出。米国向け郵便が「ほぼ停止状態」(国際機関)に陥っている。
中国系のSHEINやTemu、念頭に
トランプ大統領は7月、800ドル(約12万円)以下の輸入品にかかる関税の免除措置を8月29日付で撤廃する大統領令に署名した。個人間の100ドル以下の贈答品は関税が免除されるが、小口郵便を使って輸入品の関税を免れるのは難しくなった。

念頭にあるのはSHEINやTemuといった中国系オンライン通販事業者と、米国で社会問題化している合成麻薬フェンタニルの存在だ。米政府は、関税免除措置が「抜け穴」となり、安価な製品や危険な違法薬物が大量に流入してきたとみている。
トランプ氏は大統領令で「(関税免除措置の)特権が悪用される状況に終止符を打つ」と強調。小口輸入品にも関税を課すことで「抜け穴」をふさいで、税収増につなげるほか、輸入品の検査を厳格化することで麻薬密輸も防ぐ狙いがある。
ただ、課税を強化した場合、関税の申告や税関での検査の手間が増え、手続きの変更について業者への周知も必要になる。

日本郵便は「(郵便事業者の)実施すべき手続きが不明確で運用が極めて困難」との理由で、8月27日から米国向け郵便の一部の引き受けを停止した。
米国向け小口郵便、81%減少
国連の専門機関の万国郵便連合(UPU)によると、関税免除措置が撤廃された8月29日の米国向け小口郵便の量は1週間前の8月22日に比べて81%減少。世界の88の郵便事業者が米国向けサービスの一部または全部を停止したという。
ただ、小口郵便を使った輸入への規制強化は、トランプ政権に限った動きではない。米国も制度見直しを決めたのはバイデン前政権時代で、今回のトランプ政権の大統領令で2027年7月の廃止予定が約2年前倒しされた。
主要7カ国(G7)も安価な中国製品への免税措置で競争上不公平が生じているとの見方は共通しており、欧州連合(EU)は150ユーロ(約2万5000円)未満の輸入品で見直しを検討。日本も今年に入って議論を始めている。【浅川大樹】
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