じん肺訴訟の控訴審判決後、「勝訴」と掲げる横山巌・弁護団長(左)ら=福岡市中央区で2025年9月11日午後2時7分、森永亨撮影

 長崎市の三菱重工長崎造船所で勤務中に粉じんを吸ってじん肺などになったとして、下請け会社の元従業員と遺族計35人が三菱重工に計約5億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が11日、福岡高裁であった。松田典浩裁判長は、三菱重工に対し、原告20人に約1億2200万円を支払うよう命じた1審・長崎地裁判決を変更し、原告35人全員に計約2億3000万円を支払うよう命じた。18人の元従業員全員について、じん肺や肺がんなどの発症と就労の因果関係を認めた。

 原告は元従業員11人と、死亡した元従業員7人の遺族24人。18人の元従業員は1954~2015年、下請け会社に雇用され、同造船所で溶接や組み立てなどの作業に従事した。

 22年11月の長崎地裁判決は、13人の元従業員について病気と就労との因果関係を認めた。一方、三菱重工側の粉じん対策拡充で98年までには粉じん測定値が大幅に低下していたと指摘し、5人の元従業員について、病気との因果関係が認められないなどとして請求を棄却した。

 一方、控訴審判決は、大規模な排気、換気対策が奏功する09年までは安全配慮義務に違反していたと認定するなどし、18人の元従業員全員について因果関係を認めた。

 判決後に記者会見した元従業員の橋口洋一さん(76)=長崎市=は「全員救済が一番の、素晴らしい結果。闘いの中で亡くなっていた仲間もいるので、その人たちにも今日の判決は喜んでいただけると思う」と語った。三菱重工広報部は「判決文を精査して、今後の対応を検討したい」とコメントした。【森永亨】

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