GOのスマートフォンアプリでタクシーの行き先を指定するイメージ
タクシーの配車アプリ各社が都心のビジネス客を取り込むべく、サービスを磨いている。GO(東京・港)は「流し」で乗ったタクシーでも運転手と話すことなく、スマートフォンアプリで行き先を指定できるようにした。S.RIDE(エスライド、東京・港)は東京都心の一部で高級ミニバンを配車可能にした。

GOは同社アプリに対応するタクシー車両の座席で、車内に設置するタブレット端末に新機能を盛り込んだ。乗客が流しで乗車した後、タブレット端末とスマホを接続すればアプリ上で住所を入力できる。アプリの地図上でピンを動かし、降車地をより具体的に指定することも可能にした。

配車アプリでタクシーを呼ぶ際、あらかじめ目的地を指定できる。ただ、流しのタクシーでは行き先を口頭で伝える必要があった。利用者からは「自分では目的地を正しく伝えたつもりが乗務員にうまく伝わっていなかった」「目的地までのルート案内をするのが面倒」といった不満の声が出ていた。

新型コロナウイルス禍を経て、運転席と後部座席の間に透明な仕切りを設けたタクシー車両が増え、運転手と乗客の会話が聞き取りにくくなっている。行き先のエリア周辺の交通事情に詳しくない運転手もいる。新機能で乗客が降車したい場所を伝えやすくするほか、運転手の負担も軽減するのが狙いだ。

都内で働く30代の会社員女性は「タクシーの乗車時に取引先と電話することも多く、話さずに行き先を伝えられるのはありがたい」と語る。

GOのアプリでタクシーやハイヤーを手配した際、配車情報をウェブで他の人に共有できる機能も6月に追加した。閲覧ページのURLを発行してアクセスしてもらえば、車が迎えに来る場所の住所や到着予定時刻、車のナンバーを確認できる。代理で配車した際のスムーズな乗車を後押しする。

国土交通省によると東京23区などではタクシーの配車に占める流しの比率が7割と最も多い。2割強はアプリ配車といい、2つの乗り方が9割を超す。無線配車が多い地方と異なり、都心では流しでの乗車とアプリ配車の利便性を高める効果は大きい。

車両のラインアップを増やす取り組みも活発だ。エスライドは7月、アプリ上でトヨタ自動車の高級ミニバン「レクサスLM」などのハイヤー車両を配車できるようにした。東京都千代田区や港区など都心8区のほか、羽田空港で乗車可能だ。

S.RIDEが東京都内の一部地域で提供するハイヤー配車のサービス

タクシーに比べて料金は高めで収益拡大につながる。重要な取引先の送迎など「大切なビジネスシーンで利用してもらいたい」(同社)とし、提供エリアを順次広げていく。

エスライドに先行する形でハイヤーの配車サービスを提供しているDiDiモビリティジャパン(東京・港)は3月、配車の予約注文を受け付け始めた。トヨタの高級ミニバン「アルファード」などを利用でき、繁忙シーズンでも予約を取りやすくするのが狙いだ。

タクシーやハイヤーなどの事前予約サービスは米ウーバーテクノロジーズ傘下のウーバージャパン(東京・港)も2月以降に東京など一部地域で始めており、対応地域を広げている。GOも6月、高級ミニバンの配車予約サービスを始めた。

ICT総研(東京・中央)が2024年4月に手がけた全国調査によると、配車アプリを直近1年で利用した人の割合は約2割。そのうち20〜40代が約74%を占めた。同社は配車アプリの利用者数が27年末に2055万人と、24年末比で23%増えると見込む。都心はインバウンドの移動ニーズも高く、利便性を向上させる動きは今後も続きそうだ。(橋本剛志)

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