北海道余市町で水揚げされたブリ=2015年7月22日、武市公孝撮影
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 北海道内で水揚げの増えるブリの地産地消を促進しようと、札幌市中央卸売市場水産協議会(中央区)が取り組みを進めている。20年前まではほとんど取れなかったが、近年は全国の都道府県で首位争いを繰り広げるようになった。ただ、もともと道内でなじみの薄い食材だっただけに献立の常連のポジションはほど遠く、試行錯誤が続いている。

 調理服の学生たちが切り身を煮たり、焼いたり、あぶったり……。少しずつ料理が形づくられていった。6日に光塩学園調理製菓専門学校(中央区)であった、ブリを使ったレシピのコンテスト「BURI(ブリ)-1レシピグランプリ」。道産のブリをメインの食材とし、ビュッフェでの提供を想定したメニューが並んだ。

かば焼き仕立ての味付けにしたブリに卵を巻く学生=札幌市中央区で2025年9月6日午前10時51分、水戸健一撮影
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 「回転寿司(ずし)、しゃぶしゃぶ、ブリ大根くらい?」と言う学生たちが事前の座学で道産の特徴や各部位の脂のりをつかみ、新たな食べ方の提案に挑戦した。

 道内のブリの水揚げは2004年に673トンだったが、24年に1万6000トンと20倍超に増えた。23年(1万3659トン)は長崎県を抑え、2年ぶりに全国一に返り咲いた。

北海道でのブリの水揚げ量の推移
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 ブリは3~6月、九州の西方近海で産卵。分散しながら北上し、寒くなると、北海道やサハリン南部から脂を蓄えて九州へ南下する。高水温を好むため、かつては北海道での漁獲量は少なく、漁業者の間でも目立たない存在だった。近年の増加は、海水温の上昇が背景にあるとみられる。

 消費者になじみも薄く、総務省の24年の家計調査によると、道内の世帯の年間購入数量は平均529グラム。全国の平均1381グラムと大きな開きがある。北海道で取れたブリの多くは道外に渡り、鮮魚や加工品として消費されているのが現状だ。

 海を取り巻く環境の変化で従来と異なる魚が取れる魚種転換が進む中、市場の取扱量を維持するため、漁獲量と消費量のバランスを取ることが重要となる。伸び悩む地元の消費を拡大しようと、今回の企画につながった。

グランプリに輝いた「ブリのオープンサンド~南仏・和・南国のトリロジー~」=札幌市中央区で2025年9月6日午後0時31分、水戸健一撮影
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 提案された七つからグランプリに選ばれたのは「ブリのオープンサンド」。和風、洋風、エスニック風の3種で構成されたオリジナルの一皿だ。

 北海道のブリの水揚げは秋が最盛期。冬場に取れる脂の乗った寒ブリと違い、あっさりとしている。このため、和風は、かば焼き仕立ての味付けをほどこした。考案した2年の岡村優来(ゆら)さん(19)は「卵を巻き、家庭の食卓に並べやすくすることも意識しました」と話す。

 オープンサンドは10月から札幌東急REIホテル、札幌エクセルホテル東急のランチビュッフェで期間限定で提供される。審査員を務めたREIホテルの白井洋二料理長(61)は「おいしい。独特の臭みを消しつつ、ブリらしい風味を残した。刺し身のイメージが強くて、ビュッフェで扱いが少なかったが、価格も安いので使わない手はない」と今後の活用に期待を込めた。【水戸健一】

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