
勧告を受けたのは、大阪・堺市に本社を置き、主にスポーツタイプの自転車の変速機やブレーキなどの部品で世界的なシェアを持つ「シマノ」です。
公正取引委員会によりますとシマノは、おととし12月以降、部品の製造を委託しているおよそ120社に、長期間、発注しないにもかかわらず、自転車の「変速機」や釣り具の「リール」の製造に使う金型など4300個あまりを無償で保管させていました。
金型の中には1990年代から発注がないまま保管されていたものや1つで重さがおよそ2.6トンあるものもあり、倉庫を借りて保管していた事業者もいたということです。

また、1年に2回、金型などの保管状況を自社のシステムに入力させる作業も対価を払わずに行わせていたということです。
公正取引委員会はこれらの行為が下請け法に違反すると認定し、金型などの保管費用と作業の対価に相当する額を支払うことや再発防止を求める勧告を出しました。
保管費用を支払っていた部署も一部あったということですが、公正取引委員会の聴き取りに対し、シマノは「無償保管させることが下請け法に違反するという認識はあったが、管理が行き届いていなかった」と説明していたということです。
一方、保管させられていた事業者は「保管場所に困っていた」などと話していたということです。
シマノ「厳粛に受け止め 再発防止に努める」
公正取引委員会からの勧告を受けて「シマノ」は、対象となる下請けの事業者に対し、費用の支払いなどを進めているとした上で「勧告を厳粛に受け止め、社内教育の見直しや、チェック体制の強化などを実施し、コンプライアンスのいっそうの強化と再発防止に努めてまいります」とコメントしています。
金型の無償保管で公取委の勧告相次ぐ
製造に使う金型を下請けの事業者に無償で保管させた企業に対し、公正取引委員会が勧告を出すケースが近年、相次いでいます。
昨年度、公正取引委員会が下請け事業者に不当な要求を行ったとして下請け法に違反すると認定し、勧告を出した件数は平成以降で最も多い21件で、このうち、金型の保管に関するものは9件と4割以上を占めています。
今年度に入ってからも
▽新潟県の住宅設備機器メーカー「コロナ」
▽東京に本社がある油圧機器大手の「カヤバ」
▽川崎市の大手建材メーカー「不二サッシ」
▽群馬県の自動車用ミラーなどのメーカー「美里工業」が委託先の事業者に金型を無償で保管させるなどしていたとして勧告を受けています。
識者「慣行として事業者が費用負担のケース多い」

金型の無償保管をめぐり公正取引委員会による勧告が相次いでいることについて独占禁止法や下請け法に詳しい長澤哲也弁護士は「金型の保管をめぐる問題は昔からあり、慣行として製造を委託された事業者が費用を負担するケースが多かった。金型を預かることで将来の発注を期待する側面もあるが、立場上、費用を請求しづらく、発注者側がそれに甘えているというのが実態としてあったと思う」としています。
その上で「金型の保管が長期間、大量になると、効率的な生産にも影響が生じかねない。コストは負担すべきものが負担するという原則に立ち返り、発注者側は委託先に負担させるのは問題だという認識をしっかり持つことが大事だ」と指摘しています。
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