米国や英国、フランスなど9カ国が対イラン制裁の停止を続ける決議案に反対した=ロイター

【ニューヨーク=吉田圭織、イスタンブール=福冨隼太郎】国連の安全保障理事会は19日、イランが核合意に違反しているとして、同国に対する国連制裁を復活させることを決めた。イランへの武器輸出禁止や核開発に関係する個人・団体の資産凍結など制裁再開は27日になる。残り約10日間を使い、制裁の先延ばしを条件にイランに核施設査察を合意させる狙いもありそうだ。

安保理は19日、イランへの制裁停止を続ける決議案を否決し、制裁の復活を決めた。決議案には米国や英国、フランスなど9カ国が反対し、中ロなど4カ国が賛成した。韓国とガイアナは棄権した。

英国、フランス、ドイツは8月28日、イランによる核合意への違反を安保理に通知し、制裁復活の手続きを開始した。この「スナップバック」と呼ばれる仕組みの手続き上、通知の30日以内に安保理で「制裁停止を続ける」とする決議案の採決をとる必要があった。

2015年に安保理が採択した決議はイラン核合意を承認し、国連制裁を緩和する内容だったが、10月18日に期限切れとなる。スナップバックをせずに期限が切れると、安保理が06〜10年に採択した6つの制裁決議が永久的に無効となる。

その場合、イランと関係が近い中ロが拒否権を行使し、イランへの国連制裁を復活できない可能性があった。

制裁復活が決まったことを受けイラン外務省は19日、「現在の外交プロセスを深刻に損なう違法で挑発的な行為だ」と批判する声明を出した。同時に「イランの平和的な核計画は科学技術の発展を求める国民の意志に基づくものであり、この道を歩み続ける決意だ」と、核開発を続ける考えを改めて示した。

今回の手続き完了の結果、イランに対する国連制裁は9月27日と、残り約10日間で復活する見通しだ。英仏独は制裁復活を先延ばしする条件として、イランに国際原子力機関(IAEA)による核施設の査察再開や米国との核交渉再開、高濃縮ウランの所在の説明を求めている。

国連総会では23日から各国首脳が集まる一般討論演説が始まる。この期間中に外交的な進展があるかが注目されそうだ。

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