
【ヒューストン=赤木俊介】米疾病対策センター(CDC)の諮問委員会は19日、新型コロナウイルスワクチンの接種について、生後6カ月以上のほぼすべての米市民へ1年に1度の接種を勧めていた方針を撤回した。ワクチン接種が滞る可能性があり、感染が広がりやすい冬に向けて懸念が広がっている。
今後は患者と医療従事者が相談して接種を判断することを推奨する。CDCの予防接種実施諮問員会(ACIP)が賛成多数で決定した。ACIPは重症化リスクが低いとされる健康な人も対象となる一律推奨の必要がなくなったと判断したようだ。
ワクチン懐疑派のケネディ長官、政策に混乱
CDC所長がACIPの勧告を承認すれば、正式な予防接種の方針となる。CDCが接種を推奨するワクチンは医療保険の適用が義務付けられる。CDCのホームページによると、今回の見直しに即して接種するワクチンは保険適用義務の範囲内だ。
米国のワクチン政策はワクチン懐疑派のケネディ厚生長官の就任により混乱が広がっている。ケネディ氏は6月、ACIPの委員17人全員を解任し、自身が選んだ委員を任命した。任命された委員には反ワクチン団体に所属する人物が含まれる。
8月にはワクチンの方針を巡りケネディ氏と対立したCDC所長が解任され、幹部も相次いで辞任した。解任されたモナレズ前CDC所長は9月17日の上院公聴会でACIPの勧告を無条件で承認するようケネディ氏から圧力を受けていたと証言した。
医師会や州政府、独自の指針作成
CDCの方針を不安視する州政府や学術団体は独自の対策に乗り出した。米国医師会(AMA)の理事会は18日、今後は25年5月以前にCDCが発表したワクチン勧告を支持すると表明した。ACIPの構成員が大きく変化したことを受け「科学的根拠に基づく勧告を会員や患者に引き続き伝えるためやむを得ない」と説明した。
18日には米東部州のコネティカット、マサチューセッツ、ニューヨークなど7州が「北東部公衆衛生コラボラティブ」の結成を発表した。CDCの指針に代わる公衆衛生勧告を協議・提案する。米西部州のカリフォルニア、オレゴン、ワシントンも3日、類似した「西海岸保健同盟」を立ち上げ、17日に独自の接種勧告を発表した。
共和党でも反ワクチンに疑問の声
ワクチン政策を巡っては与党・共和党内でも意見が分かれている。ケネディ氏が新型コロナワクチンの接種は「感染を防がない」と証言した9月の上院公聴会では複数の共和党上院議員がケネディ氏のワクチン方針に関して懸念を示した。
一方、州議会の上下両院を共和党が握るフロリダ州の医務総監は同月、学校を含め州内のすべてのワクチン接種義務を撤廃する考えを明らかにしている。
ハーバード大学公衆衛生大学院などが18歳以上の米成人を対象に実施した25年3月の世論調査によると、米成人の79%が学校でのワクチン接種義務を支持した。共和党員の68%、そして「MAGA(米国を再び偉大に)」運動を支持する成人の66%も接種義務を支持した。
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