国連創設80年を祝う式典開催
新議長「地球をよりよい場所にしようと協力する唯一の場所」
ニューヨークの国連本部では23日午前、日本時間の23日夜10時から各国の首脳らによる国連総会での一般討論演説が始まり、初日はアメリカのトランプ大統領が演説します。トランプ大統領が国連で演説するのは2期目では初めてで、戦闘が長期化するウクライナやガザ地区の情勢などをめぐり、トランプ大統領がどのような発言をするのか注目されています。また、トランプ政権は、国連に対し分担金の未払いを続けるなど厳しい姿勢をとり続けていて、国連に対して何らかの言及があるのかも焦点です。その後、2日目の24日にはウクライナのゼレンスキー大統領が、26日には中国の李強首相やイスラエルのネタニヤフ首相が演説する予定です。一方、パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、アメリカからビザの発給を拒否されたため25日にビデオ演説を行うことになり、各国からはアメリカの姿勢に批判の声もあがっています。ウクライナやガザ地区の情勢をめぐっては、総会と並行して安全保障理事会の会合も23日に予定されていて、紛争当事国の首脳らの激しい議論が予想されるほか、国連を舞台にしたさまざまな首脳外交が展開される見通しです。国連はことし創設から80年を迎えました。今回の総会では、各国が国連を通じた多国間協力への連帯を示せるかどうかも注目されます。
ホワイトハウスのレビット報道官は、22日の会見で「大統領就任後、7つの戦争や紛争を終結させた」という見解を示したうえで「歴史的な成果をアピールする重要な演説になる」と述べました。このうち、中東情勢をめぐっては、イギリスやカナダなどがパレスチナを国家として承認しましたが、トランプ大統領は反対の立場を表明していて、国連総会の場でも言及する見通しです。また、サウジアラビアやカタールなど、中東各国の首脳と会談する予定で、事態の改善に向けた対応が注目されます。さらに、ロシアによる侵攻が続くウクライナ情勢をめぐっては、ゼレンスキー大統領と会談する予定で、ウクライナへの「安全の保証」について、具体的な進展があるかが焦点となります。一方、トランプ大統領は「アメリカ第一主義」を掲げ、ユネスコ=国連教育科学文化機関や、WHO=世界保健機関から脱退を表明していて、演説では、国際的な組織に対する批判も展開するものとみられます。
トランプ大統領の演説について、保守系のシンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」で国連外交が専門のブレット・シェイファー上級研究員は、平和をもたらす「ピースメーカー」としての役割を強調し、パレスチナの国家承認については非難するという見方を示しました。このうち平和への関与については「トランプ大統領は、世界各地のさまざまな紛争の解決に向けた交渉で成果を収めたとアピールするだろう。大統領は『ピースメーカー』の役割に非常に誇りを持っているように思われる」と指摘しました。そのうえで「国連演説は事前に用意されたものなので、ふだんのホワイトハウスでの記者会見などでは取り上げない政策の詳しい中身について、突っ込んで語るかもしれない」と話しました。特に外交政策の優先事項として、中東とウクライナの情勢に触れ「トランプ大統領は、イスラエルを非常に強く支持する一方、パレスチナを国家として承認する動きについては、テロに報酬を与えるようなものとして非難するだろう。ウクライナ情勢では、ロシアを非難し、紛争の終結を呼びかけるだろう。さらなる経済制裁を科そうというヨーロッパ各国の動きとの連携も考えられる」と述べました。一方、シェイファー氏は、トランプ政権が国際機関への関与のあり方について見直しを進めているとしたうえで「国連総会は見直しの結果を公表する絶好の機会になるかもしれない。国際機関の中には、有名な機関や、場合によってはアメリカの国益にとって非常に重要な機関もあり、トランプ大統領が今後の関与のあり方を示す機会になるかもしれない」という見方を示しました。
ニューヨークの国連本部では22日、国連が創設されてから80年となるのを祝う式典が開かれました。
このなかでグテーレス事務総長は「いま国連の理念はかつてない攻撃にさらされている。われわれが集まっているこの瞬間もガザやウクライナやスーダンなどで民間人が標的にされ、国際法が踏みにじられている。この瞬間も持続可能な開発目標が停滞するなか、貧困と飢餓が拡大している」と述べ、強い危機感を示しました。そのうえで「私たちは多極化する世界へ向かっている。しかし強固な多国間機関がなければ、多極化にはリスクを伴う」と述べ、国連のもと各国が協力する必要性を訴えました。
国連総会の首脳演説が23日から始まるのを前に、国連総会の新たな議長に就任したアンナレーナ・ベアボック氏がNHKのインタビューに応じました。史上5人目となる女性議長となったベアボック氏はドイツの前の外相で「緑の党」の党首を務めたことでも知られています。
ベアボック氏は、国連の置かれている現状について「創設から80年を祝うべきときに国連は、アメリカが資金を止めると表明したように、財政的にも政治的にも強い圧力にさらされている」と述べ、強い危機感を示しました。一方で、気候変動やパンデミックといった問題は「たとえ超大国でも一国では解決できない」として国連の存在意義を強調し「国連は完璧ではないが、大小あらゆる国が集い地球をよりよい場所にしようと協力する唯一の場所だ」と述べ、国連を新たな時代にあわせて改革していく意欲を示しました。また、安全保障理事会が常任理事国どうしの対立でウクライナやガザ地区で続く戦闘に効果的な対応を打ち出せない現状については「安保理が機能不全に陥った場合、国連総会が主導権を引き継ぐことになっており、過去にもそうしてきた」と述べ、平和と安全保障に関する問題で国連総会がより大きな役割を果たしていくべきだという考えを示しました。
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