世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の韓鶴子(ハンハクチャ)総裁が韓国で逮捕された。同国政界との癒着が疑われている。焦点の一つが、日本への影響だ。現在、教団に対する解散命令が審理されている。接点が問題視されてきた自民党は総裁選のさなかで、古い体質への向き合い方が各候補に問われている。今回の事件は何をもたらすか。予断を許さない中、どう見つめるべきか。(太田理英子、中川紘希)

◆信者の両親をもつ女性「絶対におかしいと思っていた」

 「信者から『先祖解怨(かいおん)』(霊界にいる先祖を苦痛から解放する儀式)として高額な金銭を巻き上げながら韓国で宮殿ができるなど、絶対におかしいと幼少期から思っていた」

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の韓鶴子総裁の肖像画(資料写真)

 信者の両親の下で育った30代女性は「こちら特報部」の取材にそう語った。日常的な献金で生活は苦しく、学生時代はアルバイトで家計を支えたという。韓鶴子総裁の逮捕を受け、「ほっとした」と口にした。  23日に政治資金法違反などの疑いで逮捕された韓総裁。韓国メディアによると、2022年1月、保守系野党の国会議員で前大統領の尹錫悦(ユンソンニョル)氏の側近に約1000万円を渡し、教団への支援を求めたなどとされる。

◆韓総裁を起訴するか否かの判断、10月中旬にも

 捜査を進めてきたのは「特別検察官」のチームだ。政治的中立性や公正性の確保が難しい政治家らの事件の際に設置され、任命された弁護士らが捜査する。  制度導入は1999年。神戸大の木村幹教授(韓国政治)は「かつて韓国は軍政が続き、検察は保守派の牙城だと批判された。1987年の民主化以降、政府から独立した機関が求められた」と説く。特定の事件ごとに国会の判断で設置される。多数派の意向に左右されやすく、中立性を保ちにくいとの指摘もあるという。  10月中旬にも韓総裁を起訴するか否か判断される見通し。日本の教団の担当者は取材に「韓総裁の体調を深く憂慮しており、一日も早く嫌疑が晴れ、釈放されることを願っている」とコメントした。

◆信者からは「真(まこと)のお母様」と呼ばれ

 韓総裁はどんな人物か。

東京・渋谷にある世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の施設に掲げられていた韓鶴子総裁(右)の肖像。左隣は創始者で夫の故・文鮮明氏

 夫で教団創始者の文鮮明氏が死去した2012年に総裁に就任。冒頭の女性によると、信者から「真(まこと)のお母様」と呼ばれ、「信者にとっては(貧困や病に苦しむ人の救済に生涯をささげた)マザー・テレサのようなポジション。文氏の没後、教団の絶対的存在になった」。だが「カジノにはまったという話が伝わってきたり、夫の死後に(天の一人娘を意味する)『独生女』宣言をして権威を強めたりと、教義に矛盾するような行動がおかしいと思っていた」という。  全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の紀藤正樹弁護士は「韓総裁は独裁的だったため、しばらくは日本の教団内部で混乱が続くだろう」とみる。

◆「類例のない膨大な被害」 東京地裁は解散命令、高裁で審理中

 教団を巡っては2023年10月、文部科学省が宗教法人法に基づく解散命令を請求。東京地裁は今年3月、高額献金などを巡る過去の民事裁判の結果から「類例のない膨大な規模の被害が生じた」と認定し、解散を命じる決定を出した。教団側が即時抗告し、現在は東京高裁で審理が続く。  解散命令は「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあったと認められた場合に出される。  紀藤氏は「解散命令は、日本での不法行為などから判断される。韓国の幹部が逮捕された事実は直接、高裁の決定を左右するものではない」と見通した一方、「教団側の主張や証拠の信用性を判断する際、裁判官の心証面に影響を与えるかもしれない」と述べた。

◆「日本への指示内容、韓国に流れた金額は解明される可能性」

 韓国での今後の推移について、全国統一教会被害対策弁護団の阿部克臣弁護士は「ある程度証拠をつかんだからこそ逮捕したのだろう。尹前政権と教団との関係が解明されていくのでは」と予測する。

旧統一教会の解散命令請求を求める署名を文化庁に提出後、記者会見する被害者家族の会の関係者ら=2022年

 韓国での捜査は日本にどう影響しうるか。  阿部氏は「捜査権は基本的に他国では行使できない。癒着疑惑の背景事情まで調べる必要性も低く、日本まで捜査が及ぶ可能性は低い」と捉えつつ「韓国内での資料確認や関係者への聞き取りで、日本への指示の内容や韓国に流れた金額の規模などが解明されるという期待はある」と話した。

◆安倍晋三元首相の祖父、岸信介元首相と近い関係

 韓国での捜査が注目されるが、無視できないのが日本での教団側と政治、特に自民党とのつながりだ。  教団は韓総裁の夫、文鮮明氏が1954年、韓国で創設し、間もなく日本でも布教活動が始まった。安倍晋三元首相の祖父、岸信介元首相は文氏と関係が近いとされ、1987年に岸氏が亡くなると、教団系の政治団体「国際勝共連合」の機関紙「思想新聞」には「本連合設立当初から勝共運動に理解を示し、陰に陽に支援、助言を行ってきた」と評伝が記された。1991年に亡くなった安倍氏の父、晋太郎氏も評伝が載った。

首相在任時の安倍晋三氏

 韓総裁との接点も浮かぶ。2017年に「マザームーン」とたたえたと報じられたのが衆院議員だった山本朋広氏。2021年9月には安倍氏が教団の友好団体「天宙平和連合」の集会に「各地の紛争の解決に努力してきた韓鶴子総裁をはじめ皆さまに敬意を表する」とビデオメッセージを寄せた。

◆「緩い」自民党いまも 教団とつながり深い議員が「推薦人」に

 韓総裁と5回面会し、関連団体に選挙応援を受けた工藤彰三衆院議員は、今回の自民党総裁選に立候補した高市早苗衆院議員の推薦人に名を連ねている。  カルト問題に詳しいジャーナリスト藤倉善郎氏は「世間の関心が旧統一教会の問題から裏金問題に移ってしまった。党内も『過ぎた話にしてしまう』という認識で、推薦人に入れることがマイナスに働くとは考えていないのでは」と...

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