イランに対する国連の制裁は、2015年に欧米などとの間で成立した「核合意」で解除されていましたが、イギリス、フランス、ドイツは、イランが、その後、合意に反して核開発を進めたとして、8月28日に制裁の発動に向けた手続きを始めていました。

制裁回避のためには、30日以内に国連の安全保障理事会で決議を採択する必要があり、26日にはロシアと中国が提出した決議案の採決が行われましたが否決されました。

これにより、イランに対する国連の制裁は、日本時間の9月28日午前9時に再び発動されることになりました。

制裁が発動されると、ウラン濃縮活動の停止が求められ、核開発が制限されるほか、武器の取り引きなども制限されます。

制裁発動に対してイラン政府は、IAEAへの協力を停止する考えを示すなど、強く反発し、国内の強硬派からは、NPT=核拡散防止条約からの脱退を求める声も上がっていて、欧米側との対立がより深まることが懸念されます。

再発動される制裁

再発動されるのは、2006年から2010年に国連の安全保障理事会で採択された決議に基づくイランへの制裁です。

これらの決議には、
▽ウラン濃縮活動の停止や、
▽武器の取り引きなどの制限
それに、
▽核開発に関わる団体や個人の資産凍結
などが盛り込まれています。

イランでは、1期目のトランプ政権下の2018年から行われているアメリカ単独の制裁により、すでに外資系企業が撤退するなどの影響が出ていて、イラン政府は「今回の制裁の再発動による影響は少ない」と繰り返し強調しています。

一方、イランの市民の間では、今後、イスラエルやアメリカとの対立が深まると、再び攻撃を受ける事態につながりかねないという不安が広がっています。

核合意めぐる動き

核合意は、2015年に、イランと、アメリカやロシアなどの国連安全保障理事会の常任理事国にドイツを加えた6か国で結ばれた国際的な枠組みです。

合意に基づき、イランが核開発を制限する見返りに、欧米などが科していたイランへの経済制裁は解除されました。

合意が結ばれた当時のアメリカはオバマ政権でしたが、1期目のトランプ政権は、イランに厳しい姿勢を示し、2018年には、国際社会の反対を押し切って、核合意から一方的に離脱しました。

そのうえで、トランプ政権は、イラン産原油の輸入やイランとの金融取引を禁止するなどの制裁を再び科しました。

この影響で、イランからの外国企業の撤退が相次ぎ、世界銀行のデータでは、
前年の2017年に2.8%だった経済成長率は、
▽2018年にはマイナス1.8%
▽2019年にはマイナス3.1%まで落ち込みました。

イランは対抗措置として、核合意を破る形でウランの濃縮度を、合意で定められた上限、3.67%をはるかに上回る60%まで高めるなどしたため、国際社会は、イランが核兵器の製造に近づいているとして懸念を強めました。

ことし4月以降、アメリカとイランは新たな合意を目指して協議を続けていましたが、6月に、イスラエルとアメリカが、イラン国内の核施設を攻撃したことを受けて協議は中断されていました。

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