
【ニューヨーク=吉田圭織】国連の安全保障理事会は30日、カリブ海の島国・ハイチに派遣している多国籍部隊を「ギャング制圧軍」に改名し、隊員数を現状から最大5倍に増やす決議を採択した。ハイチでは武装したギャングが首都ポルトープランスのほぼ全域を制圧しており、殺人や誘拐、性的暴行などの重犯罪が多発している。
決議は米国とパナマが提案した。決議には15カ国の理事国のうち12カ国が賛成し、ロシアと中国、パキスタンが棄権した。国連は2023年から多国籍部隊をハイチに派遣していたが、10月上旬に期限切れを迎える任期を延長する必要があった。
多国籍部隊には約2500人の警察官の派遣が予想されていたが、現時点で約1000人にとどまっている。今回採択された決議では派遣できる人数を最大5550人にまで引き上げることを決めた。警察官以外に軍人や民間人も派遣できるようにし、現地事務所も新設する。一方、運営資金と人員は各国が自主的に拠出する。
ハイチでは21年に大統領だったモイーズ氏が自宅で殺害されてから急速に治安が悪化している。国連によれば、25年上半期に少なくとも3100件を超える殺人事件が報告されている。100万人以上が家を追われ、ギャングは警察や政治家と癒着している。国連児童基金(ユニセフ)の推計では、ギャングのメンバーに18歳未満の子供が占める割合が50%にのぼる。
ハイチの暫定大統領評議会のサン・シル議長は国連総会の一般討論演説で25日、「(ギャング制圧軍が)導入されれば、(ハイチにとって)決定的な転換点となるだろう」と述べ、安保理に決議採択を求めていた。
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