
【ワシントン=野一色遥花】米調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスは2日、米企業や政府機関の2025年1〜9月の公表ベースの新規採用数が前年同期比6割減だったと発表した。リーマン・ショック直後の2009年以来16年ぶりの低水準となる。米連邦政府の人員削減に加え、景気不透明感により企業の人員整理が増えた。
調査対象は米企業や政府機関が公表した月次の計画を合計したもので、1〜9月の累計は前年同期比6割減の20万4939人だった。大型休暇後の9月は例年求人が多く、今年は11万人超だった。23年9月の約59万人、24年9月の約40万人などと比べて少なさが際立つ。

1〜9月の人員削減は前年同期比6割増の94万6426人で、20年以来の高水準となった。9月は前年同月比3割減の5万4064人だった。
業種別の人員削減数は政府機関が29万9755人、情報技術が10万7878人、小売りが8万6233人だった。
米政府効率化省(DOGE)の影響で政府部門の削減が目立つ。人員削減の理由として3割がDOGEを占め、2割は業況・景況感の悪化だった。人工知能(AI)の導入による削減は1万7375人と2%を占めた。
州別では1〜9月の累計で首都ワシントン(コロンビア特別区)での削減件数が29万8901人と最大で、前年同期比で8倍以上増えた。西部カリフォルニア州が前年同期比1割増の14万4528人だった。
チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスの統計は、公表ベースの案件を集計したもので、実際の採用数や人員削減数とは異なる。たとえば政府職員の解雇は訴訟に発展したため、ほかの統計データとの差が開いた。
ただ政府機関の一部閉鎖で雇用関連の統計公表が止まり、2日に予定されていた失業保険の申請件数も公表されなかった。民間集計による経済データの動向は一段と注目されている。
8月までの雇用統計では非農業部門就業者数の伸びが大幅に減速している状況が明らかにされていた。移民制限などで職探しをする人も同時に減っているため失業率が急上昇する状況には至っていないが、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「奇妙なバランス」がいつか崩れるのではと警戒している。
9月の人員削減数が公表ベースで減ったことは、このバランスがまだ崩れていないことを示唆する。ただ企業採用の冷え込みが賃上げの勢いを一段と弱めれば、米経済の底堅さを支えている個人消費の勢いにも影を落としかねない。
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